継続的な節電への第1歩、「電力見える化」いよいよ実用化へ:無線通信技術(2/3 ページ)
オフィスや家庭といった日々の生活シーンで、節電に取り組もうという機運が高まっている。継続的な節電に貢献するのが、「消費電力の見える化」や、「宅内エネルギー管理システム(HEMS:Home Energy Management System)」による機器制御の仕組みである。
ミツミ電機もモジュールを提供
Z-Waveの開発元であるSigma Designsは、Z-Waveの普及促進を図る業界団体「Z-Wave Alliance」を、2001年に立ち上げた。Z-Waveはもともと、空調や照明の制御、ドアの閉開制御、センサーからの情報収集といった用途を対象にしており、現時点で認証を取得した最終製品が500品種以上ある。
Sigma Designsブースの担当者によれば、「最近の傾向として、セキュリティとホームコントロールの分野に通信事業者が興味を持っている。音声通信やデータ通信、映像伝送に続く、次のビジネスとして注目しているようだ」という。
Z-Waveのデータ伝送速度は最大100kビット/秒。同社が供給するZ-Wave準拠の通信モジュール「ZM4101」の消費電流は、低消費電力モードのときに3.2μA、データ受信時に28.5mA、データ送信時に34mA(無線出力電力が+2.5dBmのとき)である。
図3 ミツミ電機が開発中のZ-Wave通信用モジュール これまで、Z-Wave規格に準拠した通信モジュールは、Sigma Designsのみが提供していた。2011年中には、ミツミ電機もサンプル出荷を開始する予定である。
ZM4101の外形寸法は8mm×8mm。Sigma Designsにとって第4世代のシステムLSIや、水晶発振子、受動部品を内蔵しており、外付け部品はSAWフィルタのみでよい。このシステムLSIには、RFトランシーバ部やベースバンド処理部、プロセッサ、メモリなどが統合されている。Z-Wave準拠の通信モジュールは、現在、Sigma Designsのみが提供しているものの、2011年末までにはミツミ電機も通信モジュールのサンプル提供を開始する予定である(図3)。
組み込みWi-Fiを電源タップに使う
ユビキタスは、Wi-Fiを採用した電源タップ「iRemoTap(アイリモタップ)」を開発し、ESEC2011でコンセプト展示を実施した。同社ブースでは、照明や扇風機、PCといった身の回りにある機器の消費電力をタブレットPCで把握したり、リモートでオン/オフできることを見せていた(図4)。
図4 ユビキタスの電源タップを使ったデモ Wi-Fiを採用した電源タップを開発し、ESEC2011でコンセプト展示を実施した。同社ブースでは、照明や扇風機、PCといった身の回りにある機器の消費電力をタブレットPCで把握したり、リモートでオン/オフ制御できることを見せていた。
Wi-Fiを採用した理由について、同社ブースの担当者は、インターネットへの接続性の高さを挙げた。スマートフォンやタブレットPCの市場拡大も後押しして、Wi-Fiは家庭に広く普及しつつある。普及が進むWi-Fiを利用することで、節電システムを宅内に導入する障壁を下げられるとの考えである。
電源タップに組み込んだWi-Fiモジュールには、ドライバやネットワークプロトコルスタック、セキュリティ機能など、Wi-Fi通信に必要な機能がほぼ全て搭載されている。同社のWi-Fiソリューション「Ubiquitous AIR NOE Solution」を採用した。
「当社のWi-Fiソリューションを使えば、8ビットの汎用マイコンを使っている機器など、マイコンへの負荷の観点でこれまでWi-Fi通信を搭載できなかった機器でも、システム構成を変えずに搭載可能だ」(同担当者)と主張する。宅内の機器とインターネット上のサービスを連携させることで、節電を促すさまざまな仕掛けを機器に組み込める。同社は、例えばあらかじめ決めた消費電力のしきい値を超えたときにアラートメールを利用者に出したり、Twitterと連携して家電につぶやかせたりといった利用シーンを想定している。
この他、コンピュータ周辺機器や各種デジタル機器などの開発/販売を手掛けるグリーンハウスは、950MHz帯のZigBeeを採用した電源タップを使った「電力監視システム」を、ESEC2011に出品していた。ZigBeeを採用した理由としては、消費電力が低いことを挙げた。2.4GHz帯ではなく、950MHz帯を利用することで、2.4GHz帯を使うWi-Fi通信やBluetooth通信との干渉が発生しないことも特徴である。
現在は、タブレットPCを使って機器ごとの消費電力を把握したり、電源のオン/オフを制御したりといった節電サービスをコンセプトモデルとして広く紹介している。将来的には、部屋の温度に合わせた空調制御や、屋外の明るさに合わせた照明制御も同じシステムに載せられるという。
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