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Bloom Energy社が燃料電池「Bloom Box」を発表、すでに20の大企業が導入済みエネルギー技術 燃料電池

SOFC(固体酸化物形燃料電池)は、さまざまな燃料電池のうちで最もエネルギー変換効率が高く、実用化を目指した研究が各国で続いてきた。米国のBloom EnergyはSOFCの量産に初めて成功し、企業向けの定置型装置として販売を開始した。

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 燃料電池を開発している米Bloom Energyは、2010年2月24日に新開発の燃料電池「Bloom Box」を発表した。発表会には、同社の取締役を務める元米国務長官のColin Powell氏や、カリフォルニア州知事であるArnold Schwarzenegger氏も参加した。

 先日、米放送局CBSの人気報道番組「60 Minutes」に出演したPowell氏は、「(Bloom Boxの)技術と性能が優れていることは、この目で確認した。Bloom Boxは、エネルギ・システムの変革に多大な貢献をもたらすだろう」と語っている。

 Bloom Boxは冷蔵庫ほどの大きさで、従来の天然ガスによる発電機のおよそ2倍の電力を発生させるという(図1)。eBayが導入したBloom Boxは、埋立処分場から発生するガスで発電するという。eBayによると、Bloom Boxから得られる電力量は、同社の社屋屋上の大部分を占めている太陽電池設備の有効発電量の5倍に上るという。

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図1 Bloom Energyの燃料電池「Bloom Box」 酸素と天然ガスを結合させることで電力を発生させる。

 Bloom Energyの技術の鍵となっているのが、同社の創設者であるK. R. Sridhar氏が開発した「Box」という装置である。同氏は元々、火星で活動する宇宙飛行士のために、CO2(二酸化炭素)からO2(酸素)を生成する装置の開発に取り組んでいた。ところが、有人火星探査プロジェクトが頓挫したため、Sridhar氏はこの技術を燃料電池に転用したというわけだ。Bloom Boxは酸素を取り込み、天然ガスと結合させることで電子を取り出し、発電する。発電後にBloom Boxが排出するのは水とCO2だけだという。

 Bloom Energy以外にも、米Fuel Cell Energyが同様の装置の開発を目指している。同社は、菓子類のメーカーである米Pepperidge Farmや、ホテル・チェーンを経営するStarwood Hotels and Resorts Worldwideといった企業に、合計でおよそ60基の燃料電池装置を提供している。

 一方、Bloom Energyは、Bloom Boxの技術的優位性を強調する。Bloom Boxは、既存の燃料電池と同じように、金属触媒プレートをセラミック膜と高分子膜で挟んだものを内蔵しているが、Sridhar氏は、高価なPt(白金)を触媒に使わず、代わりに安価な金属合金を使ってコストを削減している。

 しかし、現時点ではBloom Boxはそれほど安いものではない。1世帯分の電力をまかなえる装置1基でおよそ75万米ドルだ。一般的なデータ・センターを稼働させるには、4基〜6基必要だ。それでもBloom Energyは、5年〜10年のうちには1基当たり3000ドル程度まで低価格化できると見込んでいる。

 ベンチャーキャピタルである米Kleiner Perkins Caufield&Byers(KPCB)のパートナーを務めるJohn Doerr氏は「Bloom Boxは、送電網による電力供給というシステムに取って代わることを目指して設計されている。Bloom Boxを導入すれば、送電網から電力供給を受けるよりも電力コストが安く上がり、しかも環境にもやさしい」と述べた。

 Bloom Boxの開発には、KPCBをはじめ、米New Enterprise Associates、米Morgan Stanleyなどの投資会社が、シード・ファンディング(新規プロジェクト立ち上げに向けた資金)として1億米ドル以上を出資している他、生産能力の強化に向けて、最高4億米ドルの資金がいつでも使える。

 Bloom Energyによると、米GoogleやeBay、米Wal-Mart Stores、米Staples、米FedExの他、15の大企業が既にBloom Energyの燃料電池を導入しているという。

【翻訳:松永恵子、編集:EE Times Japan】

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