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大型ディスプレイの将来、省エネ対応が必須ディスプレイ技術(2/2 ページ)

 ディスプレイが進化する方向は何だろうか。1つは省エネだ。2011年9月には省エネ対応テレビの新基準「Energy Star 5.3」の運用が始まる。50インチ型を大きく超えるテレビは5.3規格をクリアしにくいことが分かった。将来の大型テレビはどのような技術を使うことになるのだろうか。

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有機ELディスプレイは本当に省エネなのか

 エネルギー利用効率向上は、有機EL(OLED)ディスプレイでも課題になっている。

 米国のUniversal Displayは、リン光発光技術である「UniversalPHOLED」を使った、エネルギー効率の高いディスプレイと白色有機EL照明を開発しているという。同社のバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーであるマイク・ハック(Mike Hack)氏によれば、「UniversalPHOLED技術と発光材料を改善し続けることで、顧客に対して、差別化したディスプレイ製品を開発するための機会を提供している。薄青発光材料と当社独自のRGB1B2サブピクセル技術*1)がカギだ」という(図1)。

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図1 RGB1B2サブピクセル技術の概念図

*1)訳注 多くの液晶ディスプレイや有機ELディスプレイでは、1画素が図1の左にあるようにRGBの3つのサブピクセルからなる。サブピクセルの面積は全て同じであり、画素面積の1/3に相当する。RGB1B2技術では4つのサブピクセルを使う。RとGのサブピクセルの面積を通常の半分、つまり画素面積の1/6に抑え、面積1/3の淡青色のサブピクセルを追加した。Bサブピクセルの面積は1/3のまま変更しない。UniversalPHOLEDでは、全てのサブピクセルでエネルギー利用効率の高いリン光材料を使っている。

 ハック氏は招待論文 "High Efficiency Phosphorescent AMOLEDs: The Path to Long Lifetime TVs"(高効率リン光材料を使ったアクティブマトリクス有機ELディスプレイ、製品寿命が長いテレビを実現する方法)の中で、有機ELテレビに関する分析結果を示した。すなわち、リン光材料を使った有機ELディスプレイは環境負荷を小さくすることができ、従来の有機ELディスプレイよりも消費電力が少なくなり得るという。さらに、リン光材料を使うと、動作温度が下がるため、ディスプレイの寿命が伸び、コストも下がる。

 同氏によれば、消費電力とディスプレイの製品寿命の観点から、さまざまなディスプレイアーキテクチャを比較すると、4サブピクセルアーキテクチャを採用したテレビが有利であるという。マイク氏は「当社の新アーキテクチャでは、従来のRGBの他に薄青色のサブピクセルを追加している。改良版の薄青色の発光材料を採用したことで、RGB1B2アーキテクチャの性能を、つい最近改善することができた」という。

 新版のRGB1B2アーキテクチャを採用すると、輝度1000cd/m2で発光させたときの単位電流当たりの明るさ、すなわち電流輝度効率は、47cd/A以上に達するという。加速試験の結果、輝度が初期(1000cd/m2)の50%以下に減少するまでの時間(寿命)は約2万時間だ。これは同社が2010年に報告した寿命の2倍である。

Samsungは大型ディスプレイでも強み

 ディスプレイには省エネルギー以外の評価軸もある。Smansung Electronicsは、SID 2011の大型部門でベストアワードを受賞した。受賞対象は70インチ型の液晶ディスプレイだ。画素数は3840×2160(UD)、リフレッシュレートは240Hzであり、3D表示が可能だ。同社のLCDビジネス担当のバイスプレジデントであるJae Woo氏は「当社の革新技術に対して、このような名誉ある賞が与えられ、喜ばしく思っている。特に競合が存在する状況で受賞できたことにだ」と語った。

 UD表示かつ240Hz動作という高度な70インチ型ディスプレイを開発できたのは、同社が開発した酸化物半導体TFT技術を適用できたからだ。没入感のある3Dディスプレイを実現できたのは70インチ型という寸法に加えて、同社の他にない技術が生きているためだ。

【翻訳:滝本麻貴、EE Times Japan、編集:EE Times Japan】

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