ロシアの半導体産業を救うのは誰か:ビジネスニュース
停滞するロシアのエレクトロニクス産業に未来はあるのか。Intelによれば、ある。モスクワ近郊の2拠点の発展に期待が掛かっている。
ロシアの半導体企業は、世界半導体市場を主導する企業から大きく引き離され、追い付く見込みもない状況が続いていた。ところが、ソフトウェアエンジニアリングが同国のマイクロエレクトロニクス分野躍進の救い手となる可能性が現れてきた。
Intelのシニアバイスプレジデントであるトム・キルロイ(Tom Kilroy)氏は、モスクワ郊外のSkolkovo(スコルコボ)を訪問した際に、ソフトウェアエンジニアリングの可能性に触れた。ロシア政府は、スコルコボに「ロシア版シリコンバレー」を構築しようと計画中である。スコルコボはモスクワ中心街から西南西に約20km離れた村落地帯だ。
キルロイ氏は、Intelのロシア進出20周年を祝うためにスコルコボを訪問した。現地紙The Moscow Timesとのインタビューの中で、「ロシアの半導体市場でのシェアは確かにわずかだが、今後の躍進の可能性が見受けられる。当社はこれまで、ロシア出身のソフトウェアエンジニアとともに、ソフトウェアの専門技術を十分に確立してきた。ロシアは当社のグローバルビジネスでも重要な役割を担っている」と述べた。
「ロシアのソフトウェア産業には、われわれの業界が必要とするコアコンピタンス(他国にはまねできない、その国ならではの核となる能力)がある。このようなことを言うことはめったにないのだが」(同氏)。
スコルコボは、マイクロエレクトロニクス産業の中心地として発展し続けている。ロシアの半導体産業ではいまだ、90nmプロセス技術が主流であるが、スコルコボから生まれるロシア独自の創意あふれるアイデアを活用し、マイクロエレクトロニクス分野が躍進を遂げることで、主要な半導体企業が採用する最先端の22nm技術へと移行できるよう目指している。
The Moscow Timesは、「世界半導体市場全体の売上高3140億米ドルのうち、ロシア企業が占める割合はわずかなものである。ロシア国内で製造されたマイクロチップとロシアが輸入したチップを合わせても、年間売上高は12億米ドルほどで、世界市場の1%未満にすぎない」と伝えた。
重要なのはもう1つの拠点か
SEMI Europeでプレジデントを務めるハインツ・クンデルト(Heinz Kundert)氏によると、ロシア半導体市場の規模は、マイクロエレクトロニクス開発を管理する半官半民の戦略が実行されれば、今後4年間で2倍になる見込みだという。
なお、SEMIは、モスクワ郊外のZelenograd(ゼレノグラード)にマイクロエレクトロニクス産業を集約することも提案している。同地はモスクワ中心部から北西に40kmほど離れている。ソビエト崩壊前は「ソビエト版シリコンバレー」として機能し、マイクロエレクトロニクス産業の中心地であったが、その後公式に閉鎖された。現在では、ロシア国内向けに半導体を製造する半官半民企業であるMicronと同Angstromが同地に拠点を置いている*1)。この2社はロシア半導体産業を主導している。
*1)ロシアの投資企業であるRusnanoは、2011年1月、有機エレクトロニクス関連の世界最大の製造設備をゼレノグラードなどに建設するため、英Plastic Logicに7億米ドルを投資することを決めている。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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