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無線設計の不具合を見つけ出せ、スペアナの進化が視界を広げるテスト/計測 スペクトラムアナライザ(2/3 ページ)

一般家庭に無線機器があふれ返る現代。機器メーカーは、標準規格に準拠した半導体チップやモジュールを利用すれば、比較的容易に無線機能を組み込める。しかし規格の林立や機器の複雑化などで、無線設計の不具合からは簡単に逃れられないのが実情だ。その不具合を確実に捕捉し、原因を追究する道具が必要になる。無線設計に欠かせない測定器であるスペクトラムアナライザが近年、この要求に応えるべく進化を遂げている。

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スペアナのデジタル化が進展

 決して容易ならぬ現代の無線設計。だが、測れないものは改善できない。まずはその不具合を確実に捕捉し、原因を追究する道具が必要だ――。無線設計に欠かせない測定器であるスペクトラムアナライザ(以下、スペアナ)が近年、この要求に応えるべく進化を遂げている。

 スペアナは、入力信号の周波数ごとの強度(電力の大きさ)を測定し、それを周波数軸上のスペクトラムとして描き出す測定器である。最も一般的なのは、スーパーヘテロダイン方式の掃引型スペアナだ(図2)。入力の高周波信号(RF信号)を周波数ミキサーで中間周波数のアナログ信号(IF信号)に変換した後、増幅およびフィルタ処理を施してから検波し、ビデオフィルタで帯域制限をかけた後にディスプレイに表示する。ミキサーを駆動する局部発振器(ローカル)の周波数を掃引することで、RF信号に含まれる特定の周波数成分の強度を、周波数をずらしながら観測する仕組みだ。スペアナが実用化された当初から利用されていた方式で、長い歴史があり、現在も主流である。

図2
図2 スーパーヘテロダイン方式の掃引型スペアナの機能ブロック図 RF入力信号をアッテネータで減衰させ、ミキサーでIF周波数に変換する。そのIF信号を増幅してフィルタを施した後、検波器で整流してから、ビデオフィルタで帯域制限をかけて、ディスプレイに表示する。最近の機種では、実際にはビデオフィルタの出力をA-D変換し、マイクロプロセッサで処理してディスプレイ表示用のデータを作り出している。

 スペアナにおける近代の最も大きな革新は、デジタル技術の導入だ。旧来のスーパーヘテロダイン方式の中間周波数(IF)以降の処理をデジタル化した。測定器メーカー各社はこれを「デジタルIF方式」などと呼ぶ(図3)。

図3
図3 デジタルIF方式を採用するスペアナの機能ブロック図 IFフィルタの後段でA-D変換を施し、それ以降の信号処理をデジタル領域で実行する。デジタル領域の処理を担うハードウェアの実装形態は、測定器によってさまざまだ。汎用のマイクロプロセッサ上で稼働するソフトウェアとして実装したり、FPGAなどを利用して専用ハードウェアとして実装したりする。

 デジタルIF方式では通常、IFフィルタ後の信号をA-D変換し、そのデジタル信号に高速フーリエ変換(FFT)を施すことで周波数スペクトラムを得る。スーパーヘテロダイン方式の掃引型が測定帯域内を周波数掃引しながら各周波数における信号レベルを測定するのとは異なり、デジタルIF方式はA-D変換器でデジタルサンプリング可能な帯域内の信号を一気に取り込む。従って、掃引型では帯域内で周波数ごとにレベルの測定タイミングが異なるのに対し、デジタルIF方式では帯域内の全ての周波数のレベルを同じタイミングで測定できる。このため、デジタルIF方式では、時間とともに周波数やレベルが変動する信号の実際の姿を正確に把握したり、発生頻度が低い突発的な信号を捕捉したりしやすくなる。

 またデジタルIF方式では、FFT処理の結果として、強度(振幅)の情報に加えて位相の情報も得られるので、携帯電話をはじめとした無線通信で使われている、位相と振幅の両方を変調したデジタル変調信号(ベクトル変調信号)を解析できるというメリットもある。

デジタル方式を各社がラインアップ

 測定器メーカー各社は、デジタルIF方式を採用した高機能のスペアナを「シグナルアナライザ」や「リアルタイムスペアナ」と呼んで製品化している。デジタルIF方式を使うという点では同じだが、それぞれハードウェア構成に違いがあり、使い勝手や機能、性能に違いがある。また、スーパーヘテロダイン方式の掃引型に対しても、使いどころが異なっている。いずれか1つが他の全てに勝るというわけではない。用途や狙いによって、最適な方式や機種は異なる。

 次ページでは、代表的なメーカーであるAgilent Technologies(アジレント・テクノロジー)、アンリツ、Rohde & Schwarz(ローデ・シュワルツ)、Tektronix(テクトロニクス)の最新の製品動向を紹介していこう。

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