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民生機器に搭載進む慣性センサー、低価格化とソフトの充実が後押しセンシング技術

民生機器に加速度センサーやジャイロスコープを搭載する動きが加速している。それを後押ししているのが、センサーの低価格化と、モーション機能などの実現を容易にするソフトウェアだ。

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 Appleの「iPhone」や任天堂の「Wii」は、MEMS加速度センサーを内蔵し、人間の動きを電子機器の入力情報として利用することで、ユーザーインタフェースに革命的な変化を起こした。加速度センサーやジャイロスコープ(角速度センサー)といった慣性センサーがこのような用途に活用されるまでには、ある程度の時間を要した。しかし、低価格化が進むなど、センサー関連の市場が成熟してきている今、慣性センサーは、幅広い種類のモーションコントロールや位置検出などのアプリケーションに応用が始まっている。

携帯機器向けセンサーの出荷数量、2015年には50億個に

 市場調査会社であるフランスのYole Developpementは、今後5年間で、加速度センサーや磁力センサーは携帯電話機全体の約50%に、ジャイロスコープは約20%に搭載される見込みだという。特に、ハイエンドのスマートフォンには搭載が進むとみられている。また、ジャイロスコープは、すでに多くのタブレット端末に搭載されている。慣性センサーが民生機器に搭載される割合は、今後5年の間に年平均で約24%増加し、そのセンサーユニットの数量は2015年までに50億個に達する見込みだという。

 とはいえ、慣性センサーの主な用途は、ゲーム機能以外で見るとごく限られているのが現状だ。一例を挙げると、加速度センサーは、携帯電話機のポートレートモード(縦向き)とランドスケープモード(横向き)とを切り替える上で必要不可欠である。また、万歩計機能を実現するために採用される場合もある。磁力センサーは2010年に、携帯電話機で正確なナビゲーション機能を提供する目的で大量に採用された。多軸のMEMSジャイロスコープは、ようやく消費者向けの機器に搭載できる水準まで価格が下がり、量産が始まったところである。これをきっかけに、携帯電話機やタブレット端末への搭載が加速するとみられるが、最初はほとんどがゲーム機能向けとなりそうだ。

低価格化とソフトの充実が採用を後押し

 慣性センサーの採用をさらに促すのが、センサーの低価格化である。Yole Developpementは、慣性センサーの平均販売価格(ASP:Average Sales Price)の下落に伴い、センサーの導入コストも低下していくとみている。例えば、3軸加速度センサーのASPは、2010年には0.70米ドルだったが、2015年には0.30米ドルにまで下がる見込みだ。つまり、1軸当たりの価格は、0.10米ドルほどになる。このように低価格化が進む理由の1つとしては、複数種類のセンサー素子と1個の信号処理ASICを単一のパッケージにまとめる動きが挙げられる。例えば、加速度センサーに磁力センサーもしくはジャイロセンサーを組み合わせ、両方のセンサーが1個の信号処理ASICを共有するという構成だ。加速度センサーから見ると、もう1つのセンサーとASICのコストを分担する格好になるので、価格を抑えられる。

 さらにはソフトウェアの存在も大きい。STMicroelectronicsやInvenSenseといった、MEMSセンサーの開発を手掛ける主要メーカーは現在、携帯電話機やタブレット端末向けにさまざまなソフトウェアやライブラリを供給している。これによって、機器メーカーは基本的なモーション機能を容易に追加できるようになった。また、MoveaやHillcrest Labsなど、モーションセンサー専用のソフトウェアを供給するベンダーも、エアマウスや、ジェスチャで操作するテレビのリモコンをはじめ、幅広い用途向けにソフトウェアを供給している。さらに、Googleが提供する「Android OS」は、最新バージョンでモーション処理APIをサポートしており、今後より高度な処理に対応を進める見込みだ。

本稿の著者であるLaurent Robin氏は、フランスのリヨンの拠点とする市場調査会社のYole Développementで、MEMSデバイス担当の市場アナリストを務めている。

【翻訳:青山麻由子、田中留美、編集:EE Times Japan】

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