さまざまな素材に転写可能なナノワイヤー回路、医療分野などへの応用も期待:プロセス技術
Stanford Universityの研究チームが、ナノワイヤー回路をさまざまな素材の表面に転写する技術を開発した。ディスプレイ、電池、生化学センサーなどへの応用が期待される。
Stanford Universityの研究チームは、ナノワイヤーを用いて形成した電子回路を、さまざまな素材の表面に転写する技術を開発したと発表した。
Xiaolin Zheng教授が率いる研究チームは、この電子回路を用いて、紙のように薄いディスプレイから、太陽電池、監視対象の細胞組織に直接取り付ける生化学センサーに至るまで、さまざまなものに応用できるとしている。
Zheng教授は、「転写時にデバイスが損傷を受けることはなく、また、剥離プロセスは室温で、しかも数秒間で行うことができる」と述べている。
このプロセスの鍵となるのは、次の2点である。1つ目は、あらかじめSiO2(二酸化ケイ素)をコーティングしたシリコンウエハーの上に、犠牲材料としてNi(ニッケル)層を形成していることである。2つ目が、厚さ800nmのポリマー層をNi層の上に形成した後に、FET、ダイオード、抵抗器などからなるナノワイヤー回路を作製するという点だ。
電子回路の形成が終わると、ウエハーを水にさらして、回路が載ったポリマー層とNi層をウエハーから剥離する。Zheng教授は、「この剥離プロセスは、シリコンウエハーからNi層を取り外すだけだ。その後、取り外した部分にエッチングを施してNi層を除去することで、回路が形成されているポリマーのみが残される」と説明する。こうして剥離した回路は、紙をはじめ、プラスチック、ガラス、金属といったさまざまな素材/形の表面に転写できるという(図1)。
一連のプロセスはウエハーを損傷させないので、同じウエハーを繰り返し再利用できる。再利用の際には、もう一度Niでコーティングするだけでよい。
このようにして形成した電子回路は、長さわずか2μmのナノワイヤーを用いているので、曲げてもほとんど損傷を受けることがない。そのため、凹凸があるなど、さまざまな形の対象物に転写することが可能だとしている。また、この回路は、剥がして再利用することもできる。例えば、この回路を用いた生化学センサーを心臓などの細胞組織に取り付けて使用した後、剥がして別の患者に使うことも可能だという。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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