米司法省がAT&Tに反トラスト訴訟を提起、T-Mobile買収の差し止めを要求へ:ビジネスニュース
米司法省が、AT&TのT-Mobile USA買収を阻止すべく、反トラスト訴訟を提起した。米国の携帯電話機ユーザーが、通信業者の競争による利益を享受し続けられるようにすることが狙いだとしている。
米司法省は2011年8月31日、AT&TによるT-Mobile USA買収の差し止めを求めて、米ワシントンD.C.の連邦地方裁判所に反トラスト訴訟を提起した。司法省は、「この買収が成立すれば、無線通信サービスの競争力が低下する恐れがある」と訴える。
AT&TはT-Mobile USAを390億米ドルで買収すると発表しているが、司法省はこの買収を阻止したい考えだ。
James M. Cole司法次官は、会見で「米国の数千万人に上る携帯電話ユーザー、とりわけ郊外に住むユーザーや低所得層のユーザーは、大手4社をはじめとする全米の無線通信業者の競争による恩恵を受けている。AT&TがT-Mobileを買収すれば、多くのユーザーが、価格の高騰や選択肢の減少、製品の品質低下など、モバイル無線サービスにおけるさまざまな不利益を被ることになるだろう。今回の訴訟は、競争がもたらすメリットをユーザーの誰もが享受し続けられるようにすることを狙ったものだ」と述べている。
司法省によると、現在米国で使用されている無線通信機器は3億台に上るが、AT&T、T-Mobile、Sprint、Verizonの大手4社がその90%以上にサービスを提供しているという。買収が成立してAT&TとT-Mobileの2社が統合されれば、4社の中でも特に積極的に安値を設定してきたT-mobileがその名を消すことになる。
司法省は、訴状で「AT&TとT-Mobileは、携帯電話サービスの潜在ユーザーが多いとされる上位100エリアのうち97エリアを含む、米国全土で競合関係にある。また、法人顧客や政府顧客の獲得においても競争を繰り広げている。AT&TがT-Mobileを買収すれば、低価格の設定や革新的な製品によって、AT&Tに果敢に勝負を挑み、モバイル無線通信サービス市場に旋風を巻き起こしてきた企業が消えることになる」と訴えている。
一方、AT&Tのバイスプレジデント兼法務顧問のWayne Watts氏は、今回の訴訟提起、とりわけ司法省が何の前触れもなく訴訟を起こしたことに、「驚きと落胆を隠せない」とコメントしている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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