4K映像を“創造”──シャープ、大型液晶パネル新技術を披露:CEATEC 2011
CEATEC JAPAN 2011のシャープブースでは、I3(アイキューブド)研究所と共同開発した「ICC 4K液晶テレビ」の試作機を紹介。ハイビジョンの映像信号から4K映像を“創造”できる大画面テレビ向け新技術だ。
シャープはCEATEC JAPAN2011で、大型液晶パネルの新たな可能性を広げる新技術を披露している。
先月(2011年9月)に発売した大画面ワイヤレス液晶テレビ「フリースタイルAQUOS」FSシリーズ、NHKと共同開発中の「8K4K」85V型液晶ディスプレイの展示に加え、I3(アイキューブド)研究所(本社=神奈川県川崎市、近藤哲二郎社長)との共同開発を開始した「ICC 4K液晶テレビ」試作機(60V型)の実演デモを特設視聴ルームで実施している。
ICC 4K液晶テレビは、シャープがAQUOSシリーズで培った大画面高精細液晶技術をベースに開発したハイビジョンの4倍の解像度(3840×2160画素)を持つディスプレイに、アイキューブド研究所が開発したICC(Integrated Cognitive Creation:統合脳内クリエーション)技術を統合するもの。単なる映像信号処理の高画質化だけでなく、パネル制御技術を組合せることで、人間が自然の景色や被写体を光の刺激として脳で理解する「認知」の過程を、映像による光の刺激として再現することが特徴だ。奥行き感や質感など、従来のテレビでは表現できなかった新たな映像体験が楽しめる。
ICC技術は、ハイビジョンの映像信号から4K映像を創造する光のクリエーション技術。従来のテレビでは、放送される電気信号からベースバンドHD信号と呼ばれるカメラの出力電気信号に戻すことを目標としていたが、ICCは電気信号の再現ではなく、液晶パネル性能を最大限に引き出すことで、カメラに入ってくる光情報を再現し、空間を創造する技術だ。従来のハイビジョン技術がカメラで撮影した映像を忠実に再現することを目標としていたのに対し、ICC技術は目で見た風景を再現することを目標にした新次元の映像処理技術と言える。
なおアイキューブド研究所は、2009年8月、パートナー企業とともに独自技術の研究開発を行うオープンプラットフォーム型研究開発企業として事業を開始。社長の近藤氏はソニー出身。
シャープブースとは離れた場所に設置された視聴ルームには5席のブースを4小間用意し、1回(約10分)に20人が体験することが可能。整理券はシャープブースで配布している。各ブースには、現行AQUOSの最高峰モデルとICC 4K液晶テレビ試作機の2台の60V型を並べ、同じ映像を表示。その違いは一目瞭然で、ICC 4K画質の美しさは視聴者を圧倒する。
4Kなので細部までしっかり表現しているのは当然。そのうえ遠近感のある風景や人物の立体感、質感などが自然界に近い状態で画面上に表示されるので、まさに目の前に現実の風景が広がっているような錯覚に陥る。
4Kコンテンツの少なさや、果たして家庭用テレビでここまでの画質が求められるのか、といったビジネス上の課題はあるが、今までにはなかった全く新しい映像体験ができるテレビであることは間違いないところ。シャープでは「商品化を前提とした共同開発」としているが、4Kパネルの量産にはまだ時間がかかるため、商品化の時期は来年以降になるという。
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