顧客を増やせば市場が見える:ルネサス エレクトロニクス マーケティング本部長 大賀昌二氏(2/2 ページ)
現在、ルネサス エレクトロニクスは、マイコン事業とアナログ&パワー事業に注力する姿勢を鮮明にしている。これら両事業の成長に重要な役割を果たすことを期待されているのが、2011年4月に設立されたマーケティング本部だ。同本部は、2012年3月末までの1年間で1万社の新規顧客を獲得する事業目標を掲げている。
顧客を新たに1万社増やす
EETJ 顧客数を増やすには海外市場での展開が鍵になります。
大賀氏 顧客数を増やすには、既にある程度浸透している国内市場よりも、海外市場での展開が重要になるのは当然のことです。全社目標である海外売上高比率60%の達成についても、マーケティング本部の役割は大きいと言えます。
とはいえ、国内顧客と同じようなアプローチを、海外の顧客に行っても思ったような成果は出ません。国内でのマーケティング活動は、顧客と直接対面して行うことがほとんどです。一方、例えば米国市場は、国土が広大であることや、潜在顧客の数が10万社以上と日本よりもはるかに多いことなどの制約条件により、直接対面してマーケティングを行うことは困難です。ここで必要になるのが、昔なら電話、現在ならメールやWebサイト展開なども加えて行うテレマーケティングと、代理店との連携です。
日本流の直接対面で行うマーケティングのノウハウを生かせないテレマーケティングも大変ですが、代理店との連携も一筋縄ではいきません。先と同じく米国市場の事例で言えば、代理店にしてみれば、米国メーカーの製品よりも知名度の低い日本メーカーの製品をわざわざ米国市場で売る必要はないのです。そのため、売れる製品であることをこちらから提示する必要があります。私が、日立製作所で米国市場の半導体マーケティングを担当していた1980〜1990年代は、米国での知名度が低いこともあって、代理店との販売契約をなかなか締結することができませんでした。しかし、Motorolaとのマイコン特許紛争などを通して日立に対する技術力が認められて徐々に知名度も高まり、何とか大手代理店との契約を結べたのが1997年です。このように、海外市場で展開を拡大することは容易なことではありません。
マーケティング本部が発足してからは、米国、欧州、中国にそれぞれマーケティング本部の副本部長を配置して、海外市場で顧客数を増やすための仕掛けを打っています。これら3つの市場を中心に、海外顧客向けのWhat to makeを探ります。3つの市場のうち、成長著しい中国は大変重視していますが、米国と欧州も、まだ顧客の掘り起こしを十分に行えていないので注力を続ける必要があります。また、米国と欧州で成功した仕掛けは、中国で活用できることが多いことも重要な要素になります。例えば、中国市場でのWebマーケティングは、米国市場向けの手法をベースに進める予定です。
EETJ 最後にマーケティング本部の部門目標を教えて下さい。
大賀氏 2011年4月から2012年3月末までの1年間で、新たに顧客を1万社増やしたいと考えています。すでに約半年を経過していますがこの目標は達成できそうです。中長期的には、今後も顧客数をさらに増やしながら、将来的にはマイコンとアナログ&パワー製品だけで1兆円の年間売上高を安定的に稼ぎ出せるようにしたいですね。
大賀昌二(おおが しょうじ)氏
1978年日立製作所入社。アナログICの設計業務を2年間務めた後、米国と国内のマーケティング業務に20年以上の間携わる。2004年4月にルネサス テクノロジの営業本部でエグゼクティブに就任する。その後、営業本部において、2005年10月に営業企画統括部長、2009年4月に戦略営業推進統括部長、社名がルネサス エレクトロニクスとなった2010年4月に副本部長に就任するなど要職を歴任。2011年4月から現職。
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