エンジニアよ!技術の演出家たれ:EETweets 岡村淳一のハイテクベンチャー七転八起(2)
新技術の売り込みって、エンジニアリングがベースになったステージパフォーマンスだと思います。観客の反応を見て、プレゼンテーション資料やデモに毎回、微調整を加えて、より賛同(と感動!)を得るためのパフォーマンスなのです。
「@trigence」のつぶやきを出発点に、企業経営のあれこれや、エレクトロニクス業界に思うこと、若い技術者へのメッセージを連載中!!→「EETweets」一覧
皆さん!こんにちは。ようやく給与処理を終えて今月の管理業務が一段落したところです。今月(2011年10月)も無事に給与を支払うことができました。経営者として、取引先やサポートしていただける皆さま、もちろん社員全員に感謝する瞬間です。この緊迫感が、サラリーマンとは一番に違うところですね。
さて、ハイテクベンチャーって名乗る以上は、新技術を商売の元手にしています。それも大手企業がめったに手を出さないような「トンデモ新技術」です。そんな普通は見向きもしないような技術をお金に変えるのが、ハイテクベンチャーの真髄だと思います。
当然、技術をお金に変えるには、他人の評価を受けなければいけません。100人に説明して、たった1人の理解を得る。その程度の歩留まりだという前提に立つことが重要です。1度や2度のダメ出しでくじけるような志なら始めないこと、そして賛同者が現れるまでやり切る覚悟も必要です。
エンジニアの間で普通に交わされる会話も、世間一般から見れば外国語を聞いているに等しい。技術の斬新さや革新性をいくら説明しても、まったく相手の琴線には響きません。けっして冗談ではなく、霊感商法と変わらない怪しさを相手に与える可能性だってあるのです。だから、エンジニアリング的な「すごさ」の説明は心の中に封印しましょう。そして、世間一般に判りやすく説明するにはどうしたら良いかを考える。
例えば、奥さんとか親戚の叔父さん叔母さんとかに、新技術の効用を理解してもらうにはどうしたらよいか?「何それ〜」と思うかもしれませんが、いざやってみると目からうろこの発見があるものです。小生も2008年に最初のプレスリリースの資料を作成したときは、インキュベーションブースに同居していた別会社のアシスタントに理解してもらえるまで、何度も資料を作り直しました。
つまり、新技術の売り込みって、エンジニアリングがベースになったステージパフォーマンスだと思います。観客の反応を見て、プレゼンテーション資料やデモのセットアップの仕方に毎回、微調整を加えて、より感動!じゃなくて――、より賛同を得るためのパフォーマンス。だから、回数は多いほど、観客の種類が多いほど、完成度は上がっていきます。
ハイテクベンチャーをやるなら、まずはパフォーマンスを演出すること。新技術をどう見せたら効果的か?それを考えながら開発計画や、サンプル供給計画を練るべきです。それじゃ、開発とマーケティングの順番が大手と逆じゃないかって?その通り。大手での常識は、ハイテクベンチャーでは非常識だってことですよ〜。
当社のトンデモ新技術の紹介は横道にそれるので今回は割愛しますが、もし興味のある方は、当社のWebサイトの「ピカ氏の技術コラム」をご覧ください。もちろん、このコンテンツも試行錯誤して作成したものですよ。このコンテンツには、賛否両論を頂きますが、話題になればそれで成功なんです(下記の画像のリンク先はpdf形式の資料です)。
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Profile
岡村淳一(おかむら じゅんいち)氏
1986年に大手電機メーカーに入社し、半導体研究所に配属。CMOS・DRAMが 黎明(れいめい)期のデバイス開発に携わる。1996年よりDDR DRAM の開発チーム責任者として米国IBM(バーリントン)に駐在。駐在中は、「IBMで短パンとサンダルで仕事をする初めての日本人」という名誉もいただいた。1999年に帰国し、DRAM 混載開発チームの所属となるが、縁あってスタートアップ期のザインエレクトロニクスに転職。高速シリアルインタフェース関連の開発とファブレス半導体企業の立ち上げを経験する。1999年にシニアエンジニア、2002年に第一ビジネスユニット長の役職に就く。
2006年に、エンジニア仲間3人で、Trigence Semiconductorを設立。2007年にザインエレクトロニクスを退社した。現在、Trigence Semiconductorの専従役員兼、庶務、会計、開発担当、広報営業として活動中。2011年にはシリコンバレーに子会社であるDnoteを設立した。
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