アナログテレビ放送の跡地を有効活用、700MHz帯を用いたITSの実証実験が開始:ビジネスニュース 無線通信技術
モバイルマルチメディア放送局「NOTTV」をはじめ、アナログテレビ放送の“跡地”の有効活用が始まっている。715〜725MHzの周波数帯、いわゆる700MHz帯を使ったITSについても、2012年3月から公道走行実験を始めることが決まった。
地上波テレビ放送をアナログ方式からデジタル方式へ移行する最大の理由として挙げられていたのが「電波の有効利用」である。アナログテレビ放送で使用していた90〜770MHzのうち、地上デジタル放送で使用している470〜710MHz以外の周波数帯域を有効活用するための取り組みが進んでいる。例えば、2012年4月1日に開局するモバイルマルチメディア放送局「NOTTV」は207.5〜222MHzを使用する。また、730〜770MHzは携帯電話の通信に利用される予定だ。
これらの他で注目されている用途が、高度道路交通システム(ITS)である。これまでITSで利用できる無線通信の周波数帯は、VICSやETCで使用している5.775〜5.845GHz(5.8GHz帯)に限られていた。しかし、5.8GHz帯は電波の直進性が高く、遮蔽(しゃへい)物の影響を受けやすいため、インフラ協調システムに適していないと言われている。そこで、アナログテレビ放送の終了後に残る周波数帯のうち、715〜725MHz(700MHz帯)をITSに利用する案が検討され、2011年12月には総務省から認可された。2012年2月には、電波産業会が、700MHz帯を用いるITSの通信規格としてARIB STD-T109を策定している。
2012年後半には規模を拡大
この700MHzの周波数帯を用いたITSの公道走行実験が、2012年3〜5月まで愛知県豊田市で行われることが決まった。主催は、警察庁傘下の新交通管理システム(UTMS)協会で、トヨタ自動車が参加する。
今回の公道走行実験では、光ビーコンを通じて所定のポイントで交通情報を提供する安全運転支援システム(DSSS)(関連記事)をベースに700MHz帯の無線通信も併用する。700MHz帯の無線通信は、右折車の死角に入った対向直進車や横断中の歩行者を路側に設置したセンサーで検知し、路側無線通信装置からその検知情報を車両に送信する際に用いる。これにより、交差点事故の主な原因となっている認知ミスの防止が可能になるという。
車両や歩行者を検知するセンサーや路側無線通信装置は、豊田市内の交通事故が多発している交差点4カ所に設置する。また、トヨタ自動車社員の通勤車両など40台に、700MHz帯の無線通信が可能なDSSS対応のITS車載機を搭載する。これらのセンサー、路側無線通信装置、ITS車載機を搭載した車両によって3月から5月までの約3カ月間、安全支援効果を計測する。2012年後半には、対象を一般市民に拡大した実験も予定している。
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