米国で今、電気自動車に乗るということ――盛り上がる市場とコミュニティー:エネルギー技術 電気自動車(3/3 ページ)
電気自動車の開発に古くから取り組んでいた米国だが、その市場は世界の他地域と同様にニッチにとどまっていた。しかし2008年にテスラがロードスターを発売、2010年末には日産リーフが上陸。政府の支援もあり、ついに市場が離陸しそうだ。ある電気自動車オーナーを訪ね、一消費者の視点から最新事情をリポートする。
盛り上がるユーザーコミュニティー
このように、米国における電気自動車の大きな市場の1つになっているワシントン州シアトル地域では、ユーザーコミュニティーも盛り上がりを見せている。彼らはFacebook上に「Seattle Nissan Leaf Owners」というグループサイトを作り、近郊の充電スタンドの設置状況や技術的な相談など、活発に意見を交換しており、200名近いメンバーが参加している。ワシントン州にはもう1つ、ワシントン州都であるオリンピアのグループサイトもあり、全米で同様のグループサイトが続々と誕生している。
現在、米国でも充電スタンドを検索できるWebサイトやスマートフォン用アプリは数多く存在しているが、plugshare.comというサイトではなんと、個人宅の充電器も登録できるようになっている。つまり、同じ電気自動車仲間として「ちょっと寄って、充電でもしていけよ」ということができるのだ。充電器を貸している間に、電気自動車へのお互いの思いを熱く語り合ったりするのだろう。
また、米国には車の改造を趣味にしていて、ガソリン車を電気自動車に改造してしまう一般人も少なくない。その中には、日産リーフの充電状況(State of Charge:SOC)メーターを独自に開発し、非公式のキットとして販売している人もいるという。日産リーフが提供するアプリケーションでは実際の残充電時間が分かりにくいため、リーフが搭載する電池システムのOBD(On-board Diagnostics)ポートに直接接続して、実際の残存量を読み取って数値で示すというものだ。このキットは配線や組み立てが必要な状態で提供されるので、機械の知識が無いユーザーでは手に負えない。エンジニアであるオバーグ氏は問題なく設置することができたが、自分ではできないという人には、コミュニティー内のエンジニアが設置を手助けすることもあるという。
米国のこのようなユーザーコミュニティーは非常にオープンだ。オバーグ氏の夫人も街中で電気自動車を運転していると手を振られたり、話しかけられたりするという。「シアトルでは、なかなか楽しい電気自動車コミュニティーができているよ」(オバーグ氏)。
最後にオバーグ氏に、米国で電気自動車が普及するためには何が必要と思うかと尋ねた。「まず、人々の誤解を解く必要がある。多くの人が電気自動車はゴルフカートだと思っている。しかし実際は違う。非常にパワフルで、運転するのが楽しくなる車だ。消費者をもっと啓発した方がいいだろう。値段はまだ少し高いが、多くの人たちが買えるレンジに下がってきている。あとはメーカーは、消費者が好みに合わせて選べるように、もっと車種を増やす必要があるだろうね」(同氏)。
Profile
登丸しのぶ(Shinobu T. Taylor)
フリーランスのテクノロジジャーナリスト。ITmediaをはじめとする複数のメディアに、ハイテク業界の展示会リポートやPC/ガジェット関連のコラムを数多く寄稿する。1997年からガートナー ジャパンで市場調査リポートの編集に携わり、2001年から半導体産業や薄型ディスプレイ産業などをカバーするエレクトロニクス業界誌の電子ジャーナルで記者を務めた。2009年から米国ワシントン州レドモンド市在住。
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