電気自動車を“Everyone's car”に、普及の課題とは? ユーザー団体の視点:エネルギー技術 電気自動車(1/3 ページ)
米国シアトル発・電気自動車(EV)市場リポートの第2弾。ようやく盛り上がりつつあるEV市場だが、本格的な離陸にはまだ乗り越えるべきハードルも多い。米国で最も活発に活動している電気自動車のユーザー団体である「Plug in America」に、電気自動車市場の現状と今後の課題を聞いた。
前回のリポートで伝えたように、米国では電気自動車(EV)市場がようやく盛り上がりつつある。しかし、本格的な離陸にはまだ乗り越えなければならないハードルも多い。本稿では、米国で最も活発に活動している電気自動車のユーザー団体である「Plug in America(PIA)」の幹部に、米国における電気自動車市場の現状と今後の課題を聞く。取材に応えたのは、プレジデントを務めるチャド・シュウィッターズ(Chad Schwitters)氏と、バイスプレジデントのトム・サクストン(Tom Saxton)氏である。
1000台の電気自動車を“救済”
Plug in Americaは、カリフォルニア州で始まった電気自動車のオーナーによるユーザー団体で、石油資源からの脱却、地球環境の改善をミッションに掲げ、電気自動車およびプラグインハイブリッド自動車の普及活動を行っている。2008年には米国税局(IRS)より非営利団体(NPO)として認定された。現在、活動の拠点はシュウィッターズ氏とサクストン氏の住むワシントン州シアトル地域に移っている。
2008年以前、PIAは「DontCrush.com」や「SaveEV1.org」といった、大手自動車メーカーによる電気自動車の廃棄活動を阻止するために制作されたウェブサイト*1)を通してつながったユーザー同士のゆるやかなネットワークとして機能していた。この活動により、少なくとも1000台の電気自動車がスクラップを免れたとしている。
2009年には、現在施行されている国のタックスクレジットによる電気自動車へのインセンティブプログラム(上限7500米ドルを所得税から控除)の実現のため、PIAのサポーターは国会議員に宛てて5万通を超える請願の電子メールを送った。最近では、すでに幾つかの州で実施されている電気自動車およびハイブリッド自動車によるHOV(High Occupancy Vehicle:2〜3人以上乗車)優先レーン使用の拡大を呼び掛けている。恒常的な活動としては、ボードメンバーが全米各地で開催されるイベントで講演するなど、消費者に向けて電気自動車の啓発活動を行うと同時に、自動車メーカー、地方および国の政治家に積極的に働き掛け、電気自動車産業全体の活性化を支援している。
“買いたくても買えない”電気自動車
――米国ではどのような人たちが電気自動車を購入しているのでしょうか。
サクストン氏 電気自動車はまだ新しい市場なので中古車がほとんど流通しておらず、消費者は新車を購入しなければなりません。つまり、経済的に自動車の選択肢として中古車しかないという消費者は、自然に購入層から外れます。
しかし、ワシントン州では、国が実施している7500米ドルのタックスクレジットと州の電気自動車に対する売上税の免除を使用すれば、日産自動車の「LEAF(リーフ)」なら2万3000米ドルのガソリン車を購入するのと同等の価格になり、新車にしては非常に買いやすい値段だといえるでしょう。そしてもちろん、電気自動車でそれなりの距離を走行すればガソリン車に比べて燃料代の節約になり、その分、家計にとってはローンの返済が楽になります。
実際に、日産リーフのオーナーの多くは電気自動車を持っていることを特別に自慢したい人たちではなく、単に所有者コストが低く済むからという理由で購入しています。
シュウィッターズ氏 ほんの1年前までは状況が異なっていました。当時、市販の電気自動車はTesla Motors(テスラ モーターズ)のスポーツカー「Tesla Roadster(テスラ ロードスター)」だけしかなく、価格も高価だったため、富裕層しか入手できませんでした。今のユーザーは意識が違います。日産と米国の発電会社であるNRG Energyが共同で実施したユーザー調査によると、電機自動車を購入した理由として最も多かった回答は「節約のため」でした。
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