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筐体の角を当てて「はい、もしもし」、ロームが新型スマホを試作オーディオ処理技術

携帯電話機やスマートフォンのスピーカを耳の穴に押し当てて通話する。そんな利用シーンは、数年後には大きく変わっているかもしれない。

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 ロームは、スマートフォンの角を耳の端部に当てて音を伝えることができる新しいタイプのスマートフォンを開発した(図1)。「軟骨伝導」と呼ぶ現象を使って利用者に音を伝えるもので、音量の調整が容易であることや、騒音環境下でも音を聞き取りやすいといった特徴がある。

 「携帯電話機やスマートフォンの音声を伝えるという最も基本的な機能を新しく変える音響デバイスだ。この技術は、あらゆる携帯電話機やスマートフォンに適用可能である」(同社)という。

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図1 スマートフォンの筐体の角を耳の端部に当てて音を伝えるスマートフォンを使っている様子 スピーカで耳の穴をふさぐのではなく、スマートフォンの角を耳の軟骨部分に当てている。

押す強さを変えて音量調整

 一般に、携帯電話機やスマートフォンのスピーカーから通話時に発生した音は、空気中を伝わり鼓膜に届く。このように伝わる音は、直接気導音と呼ぶ。これに対して軟骨伝導とは、耳の軟骨に接触させた振動源によって生まれた(1)直接気導、(2)軟骨骨導、(3)軟骨気導という3つの経路で音が伝わる現象である)*1)図2)。例えば、耳の穴の付近にある軟骨の突起である「耳珠」に音の振動源を押し当てると、軟骨伝導によって音を鼓膜まで伝えることができる。

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図2 軟骨伝導のメカニズム

 この軟骨伝導を使えば、利用者が聞き取りたい音を鼓膜の近くで発生させられるため、より鮮明な音声を伝えられる効果が生まれるという。また、振動源を耳珠に押し当てる強さを変えるだけで音量を調整できたり、振動源で耳の穴をふさいでも音を聞き取れるという利点もある。例えば、騒音環境下で耳の穴をふさいで通話すれば、騒音を遮断し、音声のみを聞き取ることができる。

 ロームによれば、機器に組み込むときの技術的なハードルは低いという。具体的には、スピーカーの替わりに、音の振動源として使う圧電素子と駆動回路が必要だが、スピーカを取り外したスペースに収まる程度の大きさである。「仕組みはシンプルだが、振動のエネルギーをスマートフォンの角に伝える構造に独自性がある」(同社)。現在はまだ試作段階だが、今後、機器メーカーや携帯事業者に軟骨伝導を使ったスマートフォンの提案を進める。

*1)軟骨気導は、奈良県立医科大学で教授を務める細井裕司氏が発見した現象。ロームは、細井氏と共同で軟骨伝導を利用したスマートフォンの開発を進めた。

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