コンチネンタルが車載イーサネットのデモを披露、PoEによる電力供給も視野に:ESEC2012速報 車載半導体
ブロードコムジャパンの「ESEC2012」ブースで、ドイツの大手ティア1サプライヤコンチネンタルが車載イーサネットのデモシステムを披露した。同システムでは、データ伝送と電力伝送を同時に行うPoE(Power over Ethernet)も活用されている。
ブロードコムジャパンは、「第15回 組込みシステム開発技術展(ESEC2012)」(2012年5月9〜11日、東京ビッグサイト)において、同社が車載システム向けに展開しているイーサネット技術「BroadR-Reach」を用いた各種デモンストレーションを披露した。BroadR-Reachとは、OPEN Alliance SIGが策定している車載イーサネット規格のベースとなっている技術である(関連記事)。
展示の中で最も注目を集めていたのが、ドイツの大手ティア1サプライヤContinental(コンチネンタル)のデモンストレーションである。ナビゲーションや映像/音楽再生が可能な機能を備える車載情報機器を中核に、合計6個のECU(電子制御ユニット)を連携させるシステムを使って、車載イーサネットのメリットをアピールした。
写真1に示したデモシステムを構成するECUは以下の通り。左上のECUは車載カメラシステムで、2個の車載カメラが接続されている。上側中央にあるのは、車載情報機器を模したタッチパネルとECUである。右上には、車載情報機器とスマートフォンなどの外部機器の間で無線通信を行うためのアンテナモジュールが設置されている。左下は、コンチネンタルがBMW向けに供給しているキーレスエントリーシステムとボディ系制御システムのECU。下側中央は、ボディ系制御システムと車載情報機器を仲介するゲートウェイECUとなっている。右下にあるのは、オーディオ再生用のアンプモジュールである。
このデモシステムは、左下のボディ系制御システムと下側中央のゲートウェイECUの間だけがCAN(Controller Area Network)で接続されている他は、全てBroadR-Reachをベースとする車載イーサネットで接続されている。さらに、赤色の配線を使用している、車載カメラシステムのECUとカメラの間や、ゲートウェイECUとアンテナモジュールの間は、1本のツイストペア(2線1対)による配線でデータ伝送と電力伝送を同時に行える「Power over Ethernet(PoE)」で接続されているのだ。
ブロードコムジャパンによれば、「PoEという言葉は、一般的な4ペア接続のイーサネットで電力を供給する技術を意味する。コンチネンタルのデモシステムでは、1ペア接続を特徴とするBroadR-Reachで電力を供給しているので、正確に言うとPoEではない。この『Power over BroadR-Reach』とでも呼ぶべき技術を使えば、車載システムの配線コストをさらに削減できるようになる」という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- イーサネットが引き起こす車載LAN規格の地殻変動
自動車の電子制御ユニット(ECU)間をつなぐのに用いられている車載LAN規格に地殻変動が起こっている。その震源となっているのが、BMWやトヨタ自動車が進めている、イーサネットを車載用途で利用するための取り組みである。 - 車載イーサネット標準化団体が勢力を急拡大、発足5カ月で30社以上が参加
車載イーサネットの標準化団体である「OPEN Alliance SIG」が勢力を急速に拡大させている。2011年11月の発足時の6社から、5カ月後の現在は33社にまで参加社数を伸ばしている。 - 車載イーサネットの標準化団体が発足、BMWと現代自動車も参加
NXP Semiconductors、Broadcom、Freescale Semiconductorの半導体メーカー3社と車載機器大手のHarmanは2011年11月9日、車載ネットワーク(IVN:In-Vehicle Network)に用いるイーサネットの標準規格を策定する組織「OPEN Alliance SIG」を設立すると発表した。