若手の切り札“教わっていません”には、こう対処する!:いまどきエンジニアの育て方(5)(2/2 ページ)
まずは自分で勉強し、分からないことがあったら聞く――。ベテラン世代のエンジニアにとっては当たり前であるこの考え方も、いまどき世代には通用しないこともあります。中には、「教わっていないので、できません」と平然と口にする若手も……。この“切り札”をかわし、若手の自発性を引き出すには、どうすればいいのでしょうか。
教わってない? それなら自分で学べ!
佐々木さんに対してすっきりしない感情を持ちながらも、田中課長は「なぜ、佐々木君は物事に取り組む前から、『無理』とか『できない』などと言うのだろうか」と考え始めました。田中課長自身は、「エンジニアは生涯、勉強だ!」と言われて育った世代です。会社の帰り道に本屋で専門書を購入し、プライベートの時間を割いて読んだ他、部門で回覧する専門誌や新聞、他社の技術報告書やデータブックなどから新しい情報を仕入れたものです。今はインターネットもあるし、情報収集も昔とは比べものにならないくらい簡単になっているはずなのに……。
佐々木君、入門書でいいから、とにかく高周波の本を何冊か買って勉強しなさい。書籍代は図書費で精算して構わないから。
え!? 本で勉強しなくちゃいけないんですか? てっきり長谷川リーダーか田中課長が教えてくれると思っていたんですが……。
まずは自分で勉強して、分からないところを聞くのが筋だろう。甘ったれるな!
……(課長、意外と冷たい……)
叱られることに慣れていない、ゆとり世代
一般に、ゆとり世代は叱られることに慣れていません。仕事のことで叱られるとなかなか立ち直れず、極端なケースでは会社に来なくなることもあるようです。そのため、叱るときには注意が必要と言われています。
しかし、筆者はまったくこのように考えていません。“叱られているうちが花”という言葉もあるように、叱られなくなったら、一人前になったか、周りから見放されたかのどちらかです。
「教わっていません」も武装手段
第2回で、「分からないので教えてほしい」と、なかなか言い出せない若手や新人が増えてきているという話をしました。「分からない」と言えないのは、“分からないと言うと、できない人間だと思われるのではないか”という恐れがあるからです。「教わっていないからできません。教えてくれたらできます」と言うのも、これと同じ心理が働いています。「分かりません」と言うよりも、「教わっていません」と言う方がまだマシだ、という論理です。また、仮に教わった結果できなかったとしても、“教え方が悪いのだ”と考えてしまえばいいので、若手にとっては逃げ道が残っているのです。
佐々木さんに「教わっていないので、できません」と言わせないためには、田中課長はどうすればいいのでしょうか。次回は、より具体的な事例を交えながら、自発性を引き出す方法についてお話したいと思います。
Profile
世古雅人(せこ まさひと)
工学部電子通信工学科を卒業後、1987年に電子計測器メーカーに入社、光通信用電子計測器のハードウェア設計開発に従事する。1988年より2年間、通商産業省(現 経済産業省)管轄の研究機関にて光デバイスの基礎研究に携わり、延べ13年を設計と研究開発の現場で過ごす。その後、組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者として、開発・技術部門の“現場上がり”の経験や知識を生かしたコンサルティング業務に従事。
2009年5月に株式会社カレンコンサルティングを設立。現場の自主性を重視した「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを提唱している。2010年11月に技術評論社より『上流モデリングによる業務改善手法入門』を出版。
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