若きエンジニアへのエール〜入社後5年間を生き残る、戦略としての「誠実」〜:「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論 ―番外編―(1/4 ページ)
「新卒から入社5年目ぐらいまでの新人、若手」という方は、たぶん社会人として最も辛く、厳しい時期にいる方だと思います。社会の矛盾、不合理、理不尽、不条理という名の弾丸が、複数の機関銃から一斉掃射される、悲惨な戦場にいるかのような、恐ろしく辛い時代です。その間の無防備な時代を凌ぐには、「戦略」が必要です。私は、新人、若手の皆さんに、「誠実」、「温厚」、「寄生」という3つの戦略を授けたいと思います。
われわれエンジニアは、エンジニアである以上、どのような形であれ、いずれ国外に追い出される……。いかに立ち向かうか?→「『英語に愛されないエンジニア』」のための新行動論」 連載一覧
編集担当の方から、「毎月の連載原稿とは別枠で、『若きエンジニアへのエール』を書いていただけないでしょうか?」という依頼を受けました。「対象読者は、新卒から入社5年目ぐらいまでの新人、若手です。江端さんのこれまでの経験や体験から、新人、若手のエンジニアがエレクトロニクス業界で生きていくに当たり、教えておきたいこと、伝えたいメッセージなどを、まとめていただけると大変嬉しく思います」との内容です。ただ、「どのような内容でも結構です。当方の覚悟はできております」というコメントが、少々気になったのですが、まあそれはさておき。
私は、メールを読んで15秒以内に、「引き受けます」との旨の連絡をしました。なぜ引き受ける気になったかと言いますと、非常に単純な理由です。「楽しい」からです。新人に説教をたれるというのは、年配にとっては「最高のエンタテインメント」であるからです。なんたって、社会というヒエラルヒーにおいて、新人や若手は社会人として弱い立場にあり、そのような自分より社会的に弱い立場にいる者に対して、上から目線で持論を一方的に述べる ―― こんな愉快なイベントを、年配であるこの私が見逃すわけがない。
これが真実であることは、簡単に「裏」が取れます。ティーンエイジャー向けの悩み相談サイトなどでは、年配者たちのうんざりするほどの書き込みがあります。年配は若い人に説教したくてしょうがないのです、本当に鬱陶(うっとう)しいくらいに。
先日、「男は顔が良くないと、やっぱり女の子にモテないでしょうか」という悩み相談に対して、「男は中身で勝負するのだ」、「内面を磨けばモテる」とか言う年配者たちの回答が、ざっと20〜30件もありました。この回答の多さには、たぶん質問者の方が驚いたでしょう。
私も、生まれて初めて相談サイトへの「書き込み」というのをやってみました。この男子の悩みをよく理解できましたから、誠実に回答しました。「その通りです。男は顔が良くないと女の子にモテません。なにしろ我が国には美しいモノ(物品の美的形態)を保護する法律(意匠法)までがあるくらいです」と書き込んでおきました。事実ですから。
さて、この「年配」というのは、日本の大半の企業においては「上司」という人間になります。そもそも、上司というのは、「上司である」という理由だけで、部下には「迷惑」な存在です。その程度の認識は、私でさえあるのですが、いろいろと聞き回ってみると、その程度の観念にすら至っていない年配者の、まあ、なんと多いことか。下手すると、「仕事に厳しいオレのことを、部下たちはひそかに尊敬している」とか「嫌われているように見えるが、実際のところ、オレは部下に人気がある」と思い込んでいたりします。本当に迷惑この上もありません。
そう思い込んでいる上司は幸せでしょうが、部下は不幸です。部下というのは、「部下である」という理由だけで不幸なのです。「ぶか」と入力したら「不幸」と漢字変換されるくらいです。まずこの事実を受け入れましょう。事実ですから。
さて、ここまでが、「エール yell:【自動】怒鳴る、がなる、わめく、鋭く叫ぶ、大声を上げる」の方のエールです。では、ここから「yell a cheer:大声で声援する」の方のエールをお送り致します。
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