「HDDが壊れる」まで(前編):福田昭のストレージ通信(2)(1/2 ページ)
HDDは壊れやすい製品だ。では、どれぐらい壊れやすいのか。HDDの寿命は仕様書にあるどの数字を見れば分かるのだろうか。平均故障間隔(MTBF)にまつわる勘違いを正しながら解説した。
HDD(Hard Disk Drive)と言えば、PCの周辺機器のなかでも壊れやすい製品の代表だろう。HDDの「突然死」に見舞われた経験を有するユーザーは少なくない。2009年に発表された調査結果によると、国内のPCユーザーの約4割が、HDDの故障を経験している。最近では、ソニーのネットワークレコーダー「nasne(ナスネ)」がHDDの故障によって発売延期を余儀なくされた。
HDD産業の業界団体である日本HDD協会(IDEMA JAPAN)によると、HDD内のデータが失われる原因の40%がハードウェアの故障によるもので、最大を占める(図1)。次が人為的なミスで、29%と約3割に上る。人為的なミスの多くは運搬や取り扱いなどによるもので、「nasne」のHDD故障も運搬が原因ではないかとみられている。
時間的に変化する故障率
HDDは、数多くの部品で構成される。信頼性理論では、数多くの部品で構成されているシステムの故障率(単位時間内に故障する確率)は、「バスタブ曲線」に従うとされている(図2)。
バスタブ曲線とは、時間経過とともに故障率が変化する様子を示した曲線である。曲線はバスタブ(浴槽)の断面のような形状をしているので、この名称が付けられている。
システムの故障率は製造直後の初期が高く、その後、急速に下がっていく。この期間が「初期故障期」である。部品が内在する欠陥が早期に不具合として現れることで、故障として見つかるからだとされる。
故障率はある値まで下がると、ほぼ一定になる。この期間が「偶発故障期」である。偶発故障期は最も故障が少ない期間で、このときの故障率にマージンを加えた値が、「製品仕様としての故障率」となる。その後、あるタイミングから故障率は上昇していく。システムを構成する部品が劣化し、正常に動かなくなるからだ。この期間が「摩耗故障期」である。
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