「I Love You」はペン入力でこそ伝わる、モバイルUI開発の今を聞く:ディスプレイ技術 タッチパネル(2/2 ページ)
スマートフォンやタブレットPC、ノートPCといったモバイル機器を、いかに直感的で分かりやすく使いこなすか。イスラエルに本社を構えるN-trigは、マルチタッチパネルとアクティブ型ペン入力の双方がUIとして不可欠だと主張する。
EETJ N-trigの歴史や提供する製品の特徴を教えてほしい。
Ben-David氏 N-trigは1999年に設立されたファブレスの半導体企業だ。イスラエルに本社を構え、米国や日本、中国、台湾にサポート/営業拠点を有する。2003年に「投影型静電容量式」と呼ぶ方式のタッチパネルの研究開発をスタートし、2006年にPC業界向けに製品化した。当社は、抵抗式タッチパネルが使われていたPC業界において、投影型静電容量式タッチパネルを初めて実用化した企業である。
現在、マルチタッチパネル用の制御モジュールとアクティブ型ペンを組み合わせたソリュ―ションを、機器メーカーやOEMメーカーに提供している。制御用モジュールには、われわれが開発したSiP(複数のアナログチップとデジタルチップで構成)が載っている。独自性は、マルチタッチパネルとアクティブ型ペンの入力を、1つのセンサーパネルで処理できること。特許を有しており、これを実現する制御モジュールを提供できるのは当社だけである。
競合他社の製品では、マルチタッチ用センサーパネルと、ペン入力用センサーパネルの2つが必要である。これに比べて、当社の制御モジュールには、部品コストが削減できること、消費電力を下げられること、薄型化が図れることという、3つの特徴がある。いずれも、スマートフォンやタブレットPC、これから市場に普及すると見込まれている薄型で高性能の「Ultrabook」を含むノートPCにとって重要な要素だ。
従来、7〜15.6インチ型の液晶パネルに対応した制御モジュールを製品化していた。2012年7月に発売した新製品によって、5.3〜5.7インチ型の液晶パネルへと対応の幅を広げた。さらに、アクティブ型ペンの開発も進めている、これまでの当社のアクティブ型ペンは乾電池で動かしていた。新たに製品化したアクティブ型ペンでは、電力源にスーパーキャパシタを採用し、20秒の充電時間で8時間という稼働時間を実現している。これまでの直径が9.5mmのぺンに加えて、直径が8mmの品種を追加しており、さらに現在、直径が5.5mmのスマートフォン用のペンの準備を進めている。
EETJ 今後の開発計画を教えてほしい。
Ben-David氏 今後、低消費電力化や小型化を進める。現在、タッチパネル機能を液晶パネルの中に一体化する「インセルタッチパネル」や「オンセルタッチパネル」と呼ぶ液晶パネルに注目が集まっている。これらの液晶パネルを対象にした制御モジュールにはより高い雑音耐性が求められるため、これに応える品種の開発を進めている。
日本市場では、これまではタブレットPCを含むPCに注力してきた。今後は、Ultrabookやスマートフォン、電子書籍リーダーへの売り込みを強化していきたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 静電容量方式のタッチ・スクリーン、マルチタッチ対応の実現方法
ユーザーは思い通りに操作できないタッチパネルを嫌う。静電容量方式のタッチパネルを選択したとしよう。マルチタッチが必要であれば、相互キャパシタンス方式の採用をお勧めする。解像度を高めるには意味のないデータを除去するソフトウェアが必要になる。雑音対策も重要だ。 - 台湾のメーカー各社、静電容量方式ディスプレイの生産を倍増
ほとんどのスマートフォンやタブレットは静電容量方式のタッチパネル機能を備えている。このため、台湾メーカーに対して静電容量方式の品種を求める声が高まるばかりだ。台湾メーカーの売上高は合計で2010年に76%も増え、TPK Holdingのように3倍に増加したメーカーもある。 - 指を滑らせて高速文字入力、スマートホンへの本格導入を狙う
タッチパネルを利用した独自のテキスト入力技術を開発している米Swype社は、シリーズB投資ラウンドで、560万米ドルを調達した。