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【NIWeek 2012】日本の最新技術を世界に発信、スーパーカブの荷台に載る全自動の放射線計測器も:テスト/計測
National Instrumentsが米国のテキサス州オースチンで毎年8月に開催する同社最大のテクニカルイベント「NIWeek」。今週の月曜日に開幕したNIWeek 2012では、展示会場の一角に「ジャパンパビリオン」が設けられ、日本の企業や大学が“日本発”の独自技術を世界に向けて紹介した。
世界中から3400人を超える技術者や研究者が参加した「NIWeek 2012」(会期は2012年8月6〜9日)。会場では、National Instruments(NI)の幹部による基調講演や6つの専門分野に分かれて開かれる技術サミットに加え、NIの新製品や同社のアライアンスパートナー、サードパーティ各社の最新技術/ソリューションが並ぶ展示会にも注目が集まっている。
この展示会にはテーマの異なるパビリオンが幾つか設けられており、NIの中核製品であるグラフィカル開発ツール「LabVIEW」のパビリオンの他、「RF/無線」や「自動テスト/データ集録」、「組み込みモニタリング/制御」といったパビリオンが並ぶ。今回、それらとともに大きな存在感を放っていたのが「ジャパンパビリオン」である。日本から6つの企業と1つの大学がブースを設け、“日本発”の最新技術情報を世界に向けて発信した(ただし1社はパネル展示のみ)。本稿では、各ブースの出展内容をフォトリポート形式で紹介しよう。
25fpsを実現した音源可視化装置 NIの認定アライアンスパートナーであるイー・アイ・ソルは、可視化演算処理を最高25fps(フレーム/秒)と高速に実行できる音源可視化装置を展示した。NIの計測/制御用ハードウェア「Compact RIO」を用いることで高速処理を実現した。Compact RIOは、FPGAを搭載しており、ユーザーがそのFPGAにLabVIEWを使って任意のロジック回路を実装できるという特徴がある。イー・アイ・ソルはこれを生かして、可視化演算を担う画像処理回路をFPGA化することで高いフレームレートを達成した。このフレームレートを確保したことで、「突発音や、時間とともに変化する音も可視化できる」(同社)。複写機やプリンタ、自動車などを開発する際に、異常音や騒音を「見える化」して確認できるので、その対策が容易になるという。(クリックで画像を拡大)
3種類の搭載カメラから選択可能 オリエントブレインは、スマートカメラ「NEXT-EYE」を参考出展した。用途に合わせてフルHDカメラやGigE Vision対応カメラ、赤外線サーモカメラを選択できるよう対応可能なインタフェースを備えた。NEXT-EYEに搭載するCPUボードはNIに開発を委託したもので、リアルタイムOSが搭載される。日本で販売予定の製品にはLabVIEWベースの画像処理構築支援ソフトウェアを同梱する。(クリックで画像を拡大)
路線バスや配達用バイクに搭載可能な全自動放射線計測システム 京都大学原子炉実験所の谷垣実助教らは、路線バスや配達用バイクに搭載できる小型サイズながらも、全自動で放射線量を計測できるシステム「KURAMA-II」を展示した。このシステムは、生活圏における空間線量率を継続的にかつ広範囲に測定する目的で開発されたもの。計測とデータ集録の機能を担うNIのCompact RIOに、浜松フォトニクスのCsl(ヨウ化セシウム)シンチレーション式放射線検出器「C12137」を組み合わせた。また、位置検出用に3G携帯電話通信/GPS受信モジュールも搭載している。外形寸法が34.5×17.5×19.5cmの筐体に収めており、路線バスの後部座席後方にある狭小のスペースにも設置しやすい。谷垣実助教によれば、このKURAMA-IIは約2カ月と短い期間で開発が完了した。前述の通りNIが提供するハードウェアプラットフォームを採用したため、従来機の「KURAMA-I」向けにLabVIEWを使って開発済みだったソフトウェアを再利用できたことが大きく寄与した。同大学では、このシステムをさらに小型化する取り組みも進める計画である。(クリックで画像を拡大)
JMAGモデルを利用したモーターHILSを実現 計測技研は、HILS(Hardware in the -Loop Simulation)向けの汎用入出力モジュール「HKS-9609」を展示した。NIが提供する計測/制御ハードウェア「NI FlexRIO」用のアダプタモジュールだ。ハイブリッド自動車や電気自動車のモーターや、再生可能エネルギー源を対象とする制御やシミュレーションに向けて開発した。JSOLの電磁界解析ツール「JMAG」で生成したモーターのモデルを用いたHILSを実現できる。(クリックで画像を拡大)
電子機器の近傍EMIを電界と磁界両方同時に解析 ペリテックは、太陽誘電が特許技術を有する電磁界同時計測プローブを用いて、電子機器の近傍EMIを電界と磁界両方同時に解析できる多チャネルEMC計測システムを展示した。このシステムは、基板上を走査する可動プローブによる計測と、受信アンテナ部分の計測を同時に実施し、その2チャネル間の相関を解析することで、受信アンテナに回り込むノイズの発生源を特定する。スペクトラムアナライザを使った従来の計測では、1チャネル分しかデータを取れず、時間軸とノイズ発生位置の相関が取れなかったという。同システムではNIのPXI Expressシャーシ「PXIe-1082」を用いて多チャネル化を実現した。
LEDの輝度色度ムラを解消 松浦電弘社は、LEDの輝度色度ムラを高速に測定する「LEDドット・コレクション・コントローラ」を展示した。測定結果に基づいてアレイ中のLED個々の出力レベルを補正することで、LEDパネルディスプレイの表示品質を高めることができるという。一般にLEDは個体ごとに輝度色度のばらつきがあり、そのままパネルに用いると発光ムラが生じることがある。このため通常は、輝度色度測定器を使って小さなエリアごとに測定を繰り返し、補正を施す。しかし大画面のLEDパネルでは、「この測定作業に費やす時間と労力が非常に大きかった」(同社)。これに対し同社のこのコントローラは、NIが供給するFPGA内蔵のCompact RIOを活用することで、40×40ピクセルの対象物を4分以内で計測可能とした。さらに独自のアルゴリズムを用いて補正機能の高速化も図っている。
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