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人材育成、人事部はもう当てにできない!?いまどきエンジニアの育て方(9)(2/2 ページ)

ひと昔前までは、人事部にも技術畑出身の人間がいたものでした。そのため、開発部門にどんな人材を採用すればいいのか、技術研修で新入社員にどんなことを教えればいいのか、人事部はきちんと把握していたのです。OJTを開発現場に任せきりにしてしまう――。エンジニア出身者が人事部にいない企業ほど、そのような傾向があるのかもしれません。

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“技術以前の問題”も存在する

 おっと……待てよ。自発的に学ぶ姿勢が欠けていたり、社会人としての常識からかけ離れた言動を取ったりする“いまどきエンジニア”にも問題はある。こういう部分に関しては、開発部門に配属する前に、人事部でしっかり心構えを教えるべきじゃないのか?

即戦力か、人材育成か

 われわれ開発部門が欲しいのは即戦力となるエンジニアだ。そうでないと、厳しい納期やコストに対応することが難しい。そうすると、新入社員は使えるようになるまで時間がかかるから、中途採用のエンジニアや外注に頼らざるを得ない。だがこれは、費用の面で得策とは言えないし、社内で明日を担う人材が育たないことは会社としても良くない。

人事部門が開発部門に、人材育成を丸投げ!?

 昔は技術が分かる人が人事部にいたなあ。当時の人事課長も、元々はハード開発2課の出身だった。もしかしたら、技術のことがまったく分からないから、開発現場に人材育成を丸投げしている? 社会人としての基礎が身に付いていない状態なのに、「OJT」という大義名分をかざして、本来は人事部で行うべきことまで現場に押し付けているのでは……。そうだとしたら、採用する際にも問題があるだろうし、人事部門が人事の仕事をしていないことになる!

 えーい、分からなくなってきた。人事部は、いったいどう考えているのか聞いてみよう。

技術が分からない人事部門

 田中課長と佐々木さんが勤務する会社、川崎テックデザインの人事部は、組織図上では管理本部に属しています。一般に人事部の仕事は、名前の通り「人に関わる事、全て」になります。例えば、採用、給与・賞与の計算、教育・育成、人事評価、福利厚生などです。

 田中課長が人事部長に対して、「当社の人材開発、エンジニア教育についてどう考えているのか」と聞いてみたところ、先ほど想像していたような答えが返ってきました。

  • 経営層からは、新卒も、中途採用と変わらず即戦力となる人材を採用するよう、要求されている。だが、即戦力の人材要件が人事部では分からない。そのため、理系大学の成績優秀な学生に絞って採用を行っている。
  • 人事部には技術が分かる人間がいない。エンジニア出身者がいない。
田中

やっぱり!


  • 開発部門の課長や中堅クラスのエンジニアに、新入社員研修の技術研修の講師を頼みたい。だが、みんな忙しそうなので、依頼するのをためらってしまう。
田中

そう言うけど、納期が遅れた場合の責任を人事部で取ってくれるわけではないし……。


  • したがって、人事部としてはビジネスマナーなどの基礎的なこと以上はやらないし、できない。

人事部を当てにしない

 田中課長は、マーケティング部の松田課長に、どうしたものかと相談します。

田中

なあ、ひどいだろう? うちの人事部。新入社員研修の技術研修を省略したら、結局、技術研修で学ぶべき内容のものを、配属後に開発部門で教えなくてはならないんだ。


松田

OJTを現場任せにしてしまうと、トレーナーによる教え方の差が、エンジニアの卵たちのレベルに顕著に表れてしまいそうですね。


田中

会社としては「エンジニアの育成が大事」と言ってるのに、組織的に育成に取り組む仕組みができてないままでいいのかなあ……?


松田

もうそろそろ、人事部に頼らない方法を考えてもいいのかもしれませんね。人事部の“素人化”は、何もうちの会社だけではないですよ。


田中

えっ?


 「若手の育成を人事部に期待することはできない」と、うすうす感じていた田中課長ですが、人材育成に関して人事部が“素人化”しているとしたら、それはそれで問題なのではないか、という懸念が湧いてきました。


 次回は、開発部門と人事部門でうまく連携を取り、若手エンジニアの育成で成果を出している会社の取り組みをお話します。

Profile

世古雅人(せこ まさひと)

工学部電子通信工学科を卒業後、1987年に電子計測器メーカーに入社、光通信用電子計測器のハードウェア設計開発に従事する。1988年より2年間、通商産業省(現 経済産業省)管轄の研究機関にて光デバイスの基礎研究に携わり、延べ13年を設計と研究開発の現場で過ごす。その後、組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者として、開発・技術部門の“現場上がり”の経験や知識を生かしたコンサルティング業務に従事。

2009年5月に株式会社カレンコンサルティングを設立。現場の自主性を重視した「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを提唱している。2010年11月に技術評論社より『上流モデリングによる業務改善手法入門』を出版。



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