三菱電機、暮らしのクオリティ向上を家電で目指す:ビジネスニュース 企業動向
東日本大震災の前後で、消費者が求めるものが変わった――。その変化を受けて、三菱電機は“つながり”や“スマート”を重視した新しいコンセプト「SMART QUALITY」を提案する。
「東日本大震災以降、生活者の意識や価値観は大きく変わった。物質的な豊かさや流行を追い求めることよりも、安全や安心、社会や家族とのつながりを求める傾向にある。それによって、われわれ家電メーカーに求められるものも変化している」――。2012年8月21日に東京都内で開催された記者説明会で、三菱電機 リビング・デジタルメディア事業(家電事業)本部長を務める梅村博之氏は、こう語る。
このような変化を受けて、三菱電機の家電事業部門は、新しいコンセプト「SMART QUALITY(スマートクオリティ)」を打ち出した。同社は以前から、ユニバーサルデザインに配慮した「らく楽アシスト」、節電を考慮した「節電アシスト」というコンセプトを構築してきたが、スマートクオリティはそれらを融合し、発展させたものになるという。
梅村氏は、「スマートクオリティのコンセプトで、当社の家電事業が原点に立ち戻るということだ」と述べる。梅村氏が語る三菱電機の原点とは、家庭から社会まで対応できる幅広い事業分野と、品質を重視する姿勢だ。原点に立ち返ることで、「社会や暮らし、製品、人をつなぐような、シンプルでスマートな技術を実現し、“明日の暮らしのクオリティ向上”につなげる」(梅村氏)としている。
インバータ機器は、日系メーカーが強い
スマートクオリティのコンセプトの下、リビング・デジタルメディア事業本部が最も注力するのが、エアコンと冷熱機器を扱う空調冷熱事業だ。2011年度における同事業本部の売り上げ構成は、空調冷熱事業が約60%を占める。
空調冷熱事業は、特に海外市場での展開を加速させる予定だ。同事業の2015年度における売上高目標は7200億円。主に欧州市場を開拓していくという。梅村氏は、「インバータ機器は日系メーカーが非常に強い。それが、(日系メーカーの勢いが失速している)AV機器などの市場とは異なる点だ。さらに、当社はインバータを搭載したエアコンの中でも、“松竹梅”の松、つまりはハイエンド機種を提供することに重点を置く」と語る。
人の不在を見逃さない、30分で運転停止
梅村氏が“松”と語るハイエンドのエアコンとして、三菱電機は「ハイブリッド霧ヶ峰」の新商品「ZWシリーズ」を、2012年11月より発売する。26畳の部屋にも対応できる定格8.0kWの機種を含む、11種類をそろえた。8.0kW品の販売予定価格は約35万8000円である。
ZWシリーズは、人がいなくなったことを感知してエアコンの風量を弱くしたり、運転を停止したりする「スマートSTOPシステム」を搭載している。具体的には、人がいなくなったことを感知すると3分後に風量が弱くなり、そのまま30分が経過すると運転が停止する。スマートSTOPシステムで運転が停止した場合、人がエアコンの前に立つだけで自動的に運転を再開する。また、運転停止時の待機電力を0.0Wに抑えている。
無駄な消費電力を抑え、人とエアコンを“つなぐ”機能を搭載した新しい霧ヶ峰は、スマートクオリティのコンセプトを実現した製品だと言えるだろう。
LED照明事業では、新会社が発足
拡大を狙うLED照明事業でも大きな動きがみられる。2012年10月1日には、三菱電機照明、オスラム・メルコ、三菱電機オスラムが合併し、新会社が発足する。なお、LED照明や蛍光灯の製造を手掛けるオスラム・メルコと、販売を担当する三菱電機オスラムは、ドイツの照明メーカーであるOSRAMと三菱電機の合弁会社だが、新会社は三菱電機の100%子会社となる。三菱電機は、OSRAMとの合弁を解消した理由として、「(蛍光管やLEDを取り付ける)器具の設計開発は三菱が、照明の設計開発はOSRAMが担当している。蛍光灯では、蛍光管に比べて器具の寿命が長かったが、LED照明の場合は、LEDの寿命が長いので、器具の寿命とほぼ同一になってきている。そのため、LEDと器具を一緒に設計開発した方が効率が上がると考えた」と説明している。
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