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有機EL長寿命化の鍵となるか、NHKが赤色発光材料を開発:材料技術 有機EL
NHKは、新しい材料を組み合わせることにより、従来に比べて消費電力が1/3、寿命が7倍の赤色発光有機EL素子を開発した。
NHKは2012年9月、従来に比べて低消費電力かつ長寿命の赤色発光有機EL素子を開発したと発表した。30.3lm/W(ルーメン/ワット)の最大電力効率と、1万5000時間の連続駆動寿命を実現しているという。
有機ELディスプレイ、「日本に勝機は訪れる」
2012年内にも、SamsungとLGから、50インチを超える大型有機EL テレビが市場に投入される予定である。いまや韓国勢が先行する有機ELディスプレイ市場だが、専門家はどう見ているのか。→記事全文はこちらから
図1は、有機EL素子の一般的な構造である。光を発する発光層は、発光材料とホスト材料とで構成されている。これまで一般的には、発光材料にはイリジウム錯体が、ホスト材料にはカルバゾール誘導体を用いた材料が使用されてきた。
今回、NHKは、上記に代わる新しい材料を組み合わせたことで、低消費電力で長寿命の赤色発光有機EL素子を開発したという。具体的には、発光材料に白金錯体を、ホスト材料にベンゾキノリン誘導体を用いた材料を使用した(図2)。従来の材料を用いた赤色発光有機EL素子に比べ、最大電力効率は約3.5倍、寿命は約7倍になるという。
デバイス | 発光材料 | ホスト材料 | 最大電力効率(lm/W) | 連続駆動寿命(時間) |
---|---|---|---|---|
新デバイス | 白金錯体 | ベンゾキノリン誘導体を用いた材料 | 30.3 | 1万5000 |
従来デバイス | イリジウム錯体 | カルバゾール誘導体を用いた材料 | 8.5 | 2200 |
表1 従来デバイスとの比較
今後は、赤色だけでなく、緑色と青色発光の有機EL素子も試作する予定だという。
NHKは、“いつでもどこでも楽しめる放送サービス”を目指して、フレキシブルな有機ELディスプレイの研究開発を進めている。
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