ガム1枚でスマホが満腹、つぶつぶカルシウムが効く:エネルギー技術 燃料電池(4/5 ページ)
軽くて長持ちする電池が携帯型機器には必須である。そのような機器にはリチウムイオン二次電池が欠かせないが、小型軽量の燃料電池と組み合わせることで、さらに利便性が増す。燃料電池を小型軽量化する技術を紹介する。
どのような用途に向くのか
燃料電池を小型軽量化することでどのような用途が開けるのだろうか。4つあるという(図5)。「燃料電池自体を軽量化すると、低出力品はもちろん高出力品を設計したとしても扱いやすく、競争力がある製品を作ることができる」(石坂氏)。
図5 開発した燃料電池の出力とエネルギー 4つの用途を狙う。いずれも軽量であることから開ける用途であるとした。電力量は5〜400Wh、カートリッジ重量は23〜900g、重量エネルギー密度は217〜444Wh/kgに相当するという。出典:アクアフェアリー、ローム
1つ目の用途は冒頭でも紹介したスマートフォン充電用だ。スマートフォン用では、ジャケットのような形状を採り、充電しながら機器を利用できる燃料電池と、USBケーブルで外部接続する燃料電池を個別に設計した。いずれも出力は2.5Wである。5.2V(500mA)出力としたため、携帯ラジオなどUSB給電で動作するさまざまな機器と組み合わせて使えるという(図6)。
図6 携帯機器向けの小型燃料電池 図左にあるのが、スマートフォンにかぶせてそのまま利用できる「iPhoneカバー型」、図中央がUSB接続を利用する「カードケース型」。カードケース型で「iPad」を充電する他、USB LEDライトや小型扇風機を動かして見せた。図左手前が燃料の入ったカートリッジ。
商品化に当たっては価格設定が難しい。「スウェーデン企業(myFC)が携帯可能な小型の燃料電池を販売している。だが、本体価格は199ユーロ(約2万円)と高い。国内向けでこの価格では、全く売れないと考えている」(ローム)。
2つ目は、レジャーや災害時の利用を想定した出力200Wの燃料電池だ。電力量は200Whであり、24V、7.4Aの出力が可能(図7)。ピーク電力1000W(1秒)に耐える*6)。「このような仕様で、手で持ち運びやすい重量の電源は他にないため、当社としては最も興味を持っている」(ロームの神澤氏)。静音性が必要な用途や、排気ガスを嫌う用途にも向くという。
燃料カートリッジは製造後20年が経過しても内部のエネルギーを失うことがない。これはアルカリ乾電池やリチウムイオン二次電池では実現不可能な特長だ。災害対策用の電源として使う場合にも役立つ。
*6) 燃料電池自体は急峻な出力増に対応できない。そこで充放電可能な小型のリチウムイオン二次電池を内蔵することで実現した。「瞬間的に高いパワーが必要な用途ではキャパシタも有望だが、この製品の仕様を満たすキャパシタはまだ入手が難しい」(石坂氏)。
図7 出力200Wの燃料電池「high power Aqua」(仮称)で46インチ型のテレビ受像機とノートPCを動かしているところ 24Vの直流出力をDC-ACインバーターを経由して100Vの交流に変換している。写真のテレビ受像機だけであれば約3時間動作可能だという。燃料電池の本体重量は6〜7kg。カートリッジの重量は750g。
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