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プレゼンテーション資料はラブレターである「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論(10)(4/5 ページ)

「プレゼンテーションとは求愛行動である。ゆえに、プレゼン資料とはラブレターである」――。これが、私がプレゼン資料についてたどり着いた結論です。ロンドンのオフィスで印刷トラブルに見舞われ、苦肉の策として作成した手書きのプレゼン資料は、予想に反して大好評でした。その勝因はどこにあったのか。今回は、実践編(資料作成)の前半です。“英語に愛されないエンジニア”のプレゼン資料のTo Be像についてお話します。

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 私の汚い手書きのプレゼンテーション資料の特長は、以下の5つであったと思います。

  1. 言語を極力使わない
  2. 絵を描きまくる
  3. ページを減らす
  4. 簡単に書く
  5. 資料にプレゼンテーションのセリフを埋め込んでおく

 では、それぞれについて、順番に説明させていただきます。

(1)言語を極力使わない

 使えない言語(英語)を使って資料を書かなければならない私たちは不幸ですが、そのような不幸な環境で生まれた、解読困難な英語を読まなければならない相手もまた不幸です。お互いが不幸にしかならないのなら、最初からやめておけば良いに決まっています。

 しかし、英語のセンテンスを一切書かないのでは、プレゼンテーション資料の構成が全然分かりません。プレゼンテーションで使う英語は、“説明の開始場所を示すもの”という程度の位置付けと考えてください。

(2)絵を描きまくる

 プレゼンテーション資料において図面が必須であることは、エンジニアの皆さんには、言うまでもなく当然のことだと思います。ですが、私はさらにもう一歩進めて、「プレゼンテーションの内容『全て』を図面として落とし込め」と申し上げたいのです。

 例えば、ある製品の操作方法や稼働状態を、あなたは英語で説明できるでしょうか。これは相当に難しいはずです。しかし、エンジニアのプレゼンテーションにおいては、ここが肝であり、魂であり、全てといっても良いくらいです。これを理解してもらえないなら、そもそもプレゼンテーションを実施する意味はありません。

 それなら最初から、製品やサービスの変化の前後の状態を図面で表しておけば良く、製品やサービスの遷移の状態が幾つもあるなら、全ての状態を図面で表現しておけば良いのです。読み手の疑問を最小限にすることにもなります。


文章で記載しないサービス内容の説明図

 スケジュール、マイルストーンを示す線表は図面にできますが、私はさらに、背景、目的、課題、その解決手段という、本来文脈でしか説明できないものも図面にすることをお勧めします。究極には、その文脈ですらも説明が難しい、製品やプロジェクトの「コンセプト」の図面化にも挑戦していただきたいのです。


本連載「『英語に愛されないエンジニア』のための新行動論」のコンセプト図

 このような図面の作成には、とても手がかかると思います。それでも、英語で「コンセプト」を説明するという絶望的な難しさに比べれば、はるかにマシなはずです。

(3)ページを減らす

 この理由は明快ですよね。私たちは書けない英語を無理して書くこともなく、相手は読み取れない英語を読まないで済みます。また、記載事項が少なければ、「ツッコミどころ」が少なくて済み、英語での議論を減らすことにもなります。

 しかし、ページを減らすことの真の意義は、「事前に論点を絞り込むこと」にあります。多過ぎる論点は、無数の検討事項を生み出し、議論を抽象化させ、結論をあいまいなものにします。その結果、製品やサービスの仕様を詰めることができず、現場のエンジニアであるわれわれの、製品化やサービスインまでのスケジュールをズタボロにしてしまいます。

 例えば、プレゼンテーション資料を作成する段階で、100個のアイコンのサンプルがあったとしましょう。これを事前に「3つ」に絞り込んでおき、さらには、その3つの優劣を「◯」「△」「×」で表にして、最初から結論として用意しておくくらいのつもりでちょうど良いのです。


「本連載用のアイコンには、どれが最もふさわしいか」を議論する。このように、候補を3つくらいに絞り込んでおく。

 なぜなら、この場合、結論がひっくり返る範囲は「3つ」で済むからです。100個のパターンを全部検証するようなプレゼンテーションは不可能です。もちろん、残り97個を葬り去った理由も明確に答えられるようにしておいてください。

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