「Xperia NX SO-02D」 透明パーツが印象的なボディの“中身”を分解して知る:バラして見ずにはいられない(3/3 ページ)
ソニーモバイルコミュニケーションズが鳴り物入りで発表したフラッグシップモデル「XPERIA S」のドコモ向けモデル「Xperia NX SO-02D」は、Floating Prismを用いたデザインが特長のモデル。登場からまだ1年も経っていないモデルだが、この頃のAndroidスマートフォンはどんな構成だったのか。中身を確認してみた。
ユニークなアンテナ位置
SO-02Dの下部は、かっこよくホームボタンなどを操作するための場所という印象があるが、実のところ、ここには通信機に必須のメインアンテナが搭載されている。下部基板に取り付けられているネジを外すとアンテナユニットが分離する。このユニットは箱型をしていて、透明な「ホームボタン」部から下が簡単に外れ、黒いメインアンテナが表れる。
無線LAN(Wi-Fi)、Bluetooth、GPSアンテナは、筐体上部に設置されているが、セルラーアンテナだけは、メイン基板から長いケーブルを敷設して下部ボックスに導いている。これもソニーのこだわりなのかもしれない。
インセルの今後
今回の分解で最も楽しみにしていたのが、「インセル」技術であった。XPERIA P、XPERA U、XPERIA Sが世界に先駆けてインセル方式を採用した。XPERIA Sは日本でも販売されているだけに、インセル方式を調べる良い機会だったのだが、残念ながら日本モデルのXPERIA Sには搭載されていなかった。
インセルとは、タッチパネルや液晶を構成する部材やバックライトを液晶パネル製造プロセスの一部として作ってしまおうという考えである。独立した存在であるタッチパネルや液晶ユニットを構成する反射板、導光板が不要になり、薄型化の決め手として期待されており、iPhone 5などにも採用されている。ソニーが実用化したインセルは前者の方で、タッチパネルを液晶パネルに内蔵した。
液晶パネルは、2枚のガラスの間に液晶を挟み、下側をTFT基板、ユーザーの目に近い側をカラーフィルタ基板と呼んでいる。ここに電圧をかける事により、液晶素子を回転させ、光を遮ったり透過させたりしている。ソニー方式は、TFT基板上に液晶制御用電源を配置し、カラーフィルタ基板上に指が触れた事を感知する膜を配置した。ユーザーは直接液晶パネルに触れてタッチ操作が可能となった。
パネル関係者によると、この方式の最大の利点は、従来タッチパネルとして設けられていた層が不要になること、これにより光の乱反射が少なくなり透過度がアップし見やすくなったこと、全体的に薄くなるため、端末の薄型要求に応えられることなどが挙げられるという。この方式が普及すると、現在のタッチパネル専業メーカーにとって打撃は大きいと思われる。タッチパネルで大きなシェアを占める台湾のChimei、Wintekにとってはバッドニュースだ。
インセルの未来予想図
ディスプレイは何といっても携帯電話やスマートフォンで最大の電子部品の1つである。その広大なエリアの新しい用い方としてさまざまな提案が行われており、その1つがインセルである。前述のようにタッチパネルを液晶パネルに組み込むことに加え、バックライトの一体化も研究されている。さらに夢のような話だが、光を検知するフォトダイオードを組み込んで、コピー機のような役割を持たせるというアイディアもある。例えばディスプレイに名刺を置き、スタートボタンを押すとスキャンされ、名刺のコピーが端末に保存されるのである。コピー機に限らず指紋認証にも有効だ。
これらの技術は、我々ユーザが体感できるものであり、ワクワク感あふれるものだ。この分野では日本が先行しているといわれ、今後の製品化が非常に楽しみである。
著者プロフィール:柏尾南壮(かしお みなたけ)
タイ生まれのタイ育ちで自称「Made in Thailand」。1994年10月、フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズを設立し、法人格は有していないが、フリーならではのフットワークの軽さで文系から理工系まで広い範囲の業務をこなす。顧客の多くは海外企業である。文系の代表作は1999年までに制作された劇場版「ルパン三世」各作品の英訳。iPhone 4の中身を解説した「iPhoneのすごい中身」も好評発売中。主力の理工系では、携帯電話機の分解調査や分析、移動体通信を利用したビジネスモデルの研究に携わる。通称「Sniper Patent」JP4729666の発明者。
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