「Cortex-A50」はサーバだけじゃない、モバイル向けも2014年にデバイスが登場:スマホの処理性能が3倍に(1/2 ページ)
ARMの最新プロセッサコア「Cortex-A50シリーズ」を搭載するデバイスが2014年にも出荷される。64ビット対応ということでサーバ向けの製品展開が注目されていたが、モバイル機器向けのデバイスも同時期に出荷が始まる見込みだ。
ARM(アーム)は2012年12月5日、東京都内で会見を開き、最新の「ARMv8アーキテクチャ」をベースに開発した64ビット対応のプロセッサコア「Cortex-A50シリーズ」について説明した。
アームのプロセッサ部門組み込みプロセッサ担当バイスプレジデントを務めるKeith Clarke氏は、「スマートフォンやタブレット端末などのモバイル機器に代表される、PC以外のコンピュータ機器の多様化を支えてきたのがアームのエコシステムだ。今では、米国の成人の23%はモバイル機器でニュースを閲覧しており、BBCが提供するロンドン五輪の映像の視聴者のうち41%はモバイル機器からアクセスしていた。そして、これらのコンピュータ機器と同じような変革の波が、サーバやネットワーク機器にも訪れようとしている。Cortex-A50シリーズは、サーバやネットワーク機器の低消費電力化に加えて、モバイル機器のさらなる性能向上にも貢献するだろう」と語る。
Cortex-A50シリーズは、高性能が特徴の「Cortex-A57」と、低消費電力が特徴の「Cortex-A53」から構成されている。Cortex-A57を用いれば、「スーパーフォン(最先端のスマートフォン)の処理性能を、現行品の3倍まで高められる」(Clarke氏)という。一方のCortex-A53は、モバイル機器に幅広く採用されている「Cortex-A9」と同じ処理性能を持ちながら、同じ製造プロセスで回路面積を40%以上削減できる上に、消費電力も4分の1まで低減可能だ。
これらは単体でも利用できるが、2種類のプロセッサコアを組み合わせて使う「big.LITTLE処理」によって、それぞれの特徴を最大限に引き出すことができる。
big.LITTLE処理は、ARMv8アーキテクチャの前世代となるARMv7アーキテクチャの最新プロセッサコアである「Cortex-A15」と「Cortex-A7」から導入された手法だ。実際に、これら2つのプロセッサコアによるbig.LITTLE処理が可能なシリコンチップを製造したところ、高性能のCortex-A15と同等の処理性能を引き出しながら、平均消費電力はCortex-A15単体の2分の1以下に抑えられたという。低消費電力のCortex-A7と比べた場合には、最大処理性能は2.5倍、平均消費電力は2倍程度になる(関連記事1)。
Cortex-A57とCortex-A53を組み合わせたbig.LITTLE処理は、Cortex-A15とCortex-A7の組み合わせよりも最大処理性能をさらに向上できる。20nmプロセスのCortex-A57×2コア+Cortex-A53×2コアの構成は、28nmプロセスのCortex-A15×2コア+Cortex-A7×2コアの構成と比べて、平均消費電力はほぼ同等ながら、最大処理性能は1.5倍程度になる。現行のスーパーフォンに相当する、32nmプロセスのCortex-A9×4コアの構成と比べても、最大処理性能は2.5倍以上、平均消費電力は約25%低減できるようだ。
Cortex-A50シリーズは、big.LITTLE処理が利用可能なことに加えて、ベースとなるARMv8アーキテクチャによって64ビットのメモリアドレス空間にも対応している。そして、Cortex-A57は、最大16コアまで拡張できるため、モバイル機器とはけた違いの処理性能が必要なサーバ向けのプロセッサも構築できる。これらの理由から、64ビット化が進んでいるサーバやネットワーク機器にも、Cortex-A50シリーズを展開できるというわけだ。
実際に、Cortex-A50シリーズのライセンス契約を表明している5社のうち、AMDとCalxedaはサーバ向けのプロセッサ製品に採用する計画である。
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