STマイクロが日韓地区の売上高を2018年に20億ドルへ、2012年比で倍増:ビジネスニュース 企業動向
STMicroelectronics(STマイクロ)は、日本と韓国について「新しい戦略を展開していく上で重要な地区」と位置付ける。両地区における同社の売上高は現在約11億米ドルである。それを2015年には15億米ドル、5年後の2018年にはほぼ倍増となる20億米ドルまで拡大していく計画だ。
STMicroelectronics(STマイクロ)は2013年3月11日、東京都内で会見を開き、「今後の事業戦略と2013年における製品別の重点分野」などについて説明した。
同社の社長兼CEO(最高経営責任者)を務めるCarlo Bozotti氏は、「日本・韓国地区には多くのリーディング企業が存在し、技術革新のスピードも早い。新たな戦略に取り組む上で重要な市場である」と強調した。特に、自動車やデジタル家電などの分野では、高い市場占有率と、先端技術開発の方向性に対する影響力を持つ企業が多いからだ。現在、日本および韓国地区における同社の売上高の合計は約11億米ドルである。これを2015年までに15億米ドルとし、5年後の2018年には2012年比でほぼ倍増となる20億米ドルを目指す考えである。
対象市場の成長率は4〜4.5%
Bozotti氏は、2012年の業績についても説明した。全体の売上高は約85億米ドル(モバイル機器向け通信ICを手掛けるST-Ericssonを含む)で、分野別の売上高構成比率は「アナログ、MEMS、マイクロコントローラ」(AMM)分野が38%を占めた。次いで自動車製品(APG)分野が18%と続く。デジタル製品分野は16%、パワー・ディスクリート製品(PDP)分野は12%となった。残りはST-Ericssonが担当するワイヤレス分野で、全体の16%である。2013年に関しては、事業対象とする市場成長率を4.0〜4.5%増と予測している。その中で、同社は既存の顧客に加え、新規顧客の獲得などにより市場成長率を上回る伸びを期待する。
続いてBozotti氏は、同社がこれから注力していく製品分野して、「センス&パワー、オートモーティブ向け製品」と「エンベデッドプロセッシングソリューション」の2つを挙げた。Bozotti氏によれば、取り組みを強化していく分野の市場規模は、2013年に約1400億米ドル、その成長率は4.3%増と推定されている。その内訳は、センス&パワー、オートモーティブ向け製品の市場が約730億米ドルで、2012年から2015年までの年平均成長率は4.8%とみられている。エンベデッドプロセッシングソリューション分野の市場規模は約670億米ドルで、年平均成長率は4.4%を見込む。
注力する2分野に、5製品群を提供
こうした市場環境の中で同社は、5つの製品群を強化していく。Bozotti氏は、「これらの製品群がこれからのSTマイクロの成長をけん引するドライバとなる」と述べた。1つ目となる「オートモーティブ向け製品」では、これまでに22億米ドルを超える規模のデザインインを獲得したPowerPCアーキテクチャの32ビットマイコンを用意している。また、110nmのBCDプロセスを用いたスマートパワーIC、40nmプロセスで製造される組み込みフラッシュメモリ内蔵のロジック製品なども開発中である。
2つ目の「パワー&スマートパワー製品」では、200Vあるいはそれ以下の低耐圧MOSFETやIGBT&モジュール製品を、産業機器や通信機器、自動車分野向けに拡充していく計画だ。スマートパワーICは、携帯型機器にターゲットを絞って新製品を投入する予定である。
3つ目の「アナログ・MEMS・センサ製品」では、小型のモーションMEMSおよびセンサーを提供しているが、さらなる微細化に取り組んでいる。MEMSマイクロフォンやホバリング機能を内蔵したタッチスクリーンコントローラなどにも注力していく。
4つ目の「マイクロコントローラ製品」では、32ビット汎用マイコン「STM32シリーズ」で新たに10品種を追加したり、NFC(Near Field Communication)コントローラとセキュア機能を1パッケージにした次世代NFC向け製品を充実したり、デュアルインタフェースEEPROMの新製品を拡充したりする予定である。
5つ目の「デジタル製品」では、アプリケーションプロセッサやCMOSイメージング製品、近接検出センサーなどの売り上げ拡大を図るとともに、新興国向けに40nmプロセスで製造したSTB用ICの投入などを計画している。
FD-SOIやBCD技術で差異化を実現
Bozotti氏は、研究開発の方向性についても触れ、3つのキーテクノロジを挙げた。1つ目は、完全空乏型SOI(FD-SOI:Fully Depleted Silicon-on-Insulator)技術である。Bozotti氏は「現在は28〜14nmプロセスのFD-SOI技術を共同開発中だが、10nmプロセス技術までは微細化を進めていく。FD-SOI技術を使えば、バルクCMOSに比べてトランジスタの電力効率を最低でも50%改善可能で、動作周波数も30%向上できる。0.6Vといった低電圧で駆動できるのもメリットだ」という。
2つ目は、同社は20年以上に渡り研究開発を続けている、BCD(Bipolar、CMOS、DMOS)技術である。既に第9世代に当たる110nmプロセスの開発も完了している。BCD技術を用いて量産されているスマートパワー製品は、電気自動車や照明器具、医療機器、汎用モータなどの用途で用いられているという。
最後の3つ目がMEMS技術である。同社は10億個の累計出荷実績を持ち、「昨年実績で世界トップのシェアを持つ」と主張する。特に加速度センサーやジャイロセンサーなどのモーションMEMSは代表的な製品である。この他、圧力センサーや温度センサーといった環境MEMS、マイクロフォンなどのアコースティックMEMS、さらにはインクジェットプリンターなどに用いられるマイクロアクチュエータなども手掛けている。
ST-Ericssonの方向性は2103年9月までに結論
なお、Bozotti氏は、事業撤退を表明しているST-Ericssonについて、「(最終的な結論は)まだ発表されていないので公表はできないが、いくつかの戦略オプションがある」と述べるにとどまった。2013年第7〜9月期までには結論を出す予定だ。
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