中国とインドが数十億ドルを投資する半導体産業、米国の存在感低下は必至か:ビジネスニュース(1/2 ページ)
米国ベンチャーキャピタルによる半導体の新興企業への投資が、減少傾向にあるという。反対に、中国やインドでは、政府が主体となって半導体企業への大規模な投資を行っている。米国の大手EDAツールベンダーであるケイデンスのCEOは、こうした傾向に懸念を示している。
Cadence Design Systems(ケイデンス)のCEO(最高経営責任者)であるLip-Bu Tan氏によると、中国とインドの各政府は近く、2013年に自国の半導体産業に数十億米ドルを投資する計画を発表するという。ベテラン投資家としての顔も持つTan氏は、米国のベンチャーキャピタルによる半導体産業への投資が減少傾向にあることに懸念を示している。
Tan氏は、ケイデンスのユーザーカンファレンス「CDN LIVE 2013」(2013年3月12〜13日)の基調講演の前に開催された技術ジャーナリスト会議で、米国内で新たに半導体企業を立ち上げる事例が減少傾向にあることや半導体設計コストの上昇、EDA業界の成長に向けた再編の必要性などについて、意見を述べた。
同氏は、「中国とインドは、半導体産業に多額の投資を行っている。米国政府も、同様の戦略を取るべきだ。半導体産業に十分な投資を行わなければ、米国のエンジニアは近い将来、仕事を求めて中国へ渡らざるを得なくなるだろう。このままでは、自分の子どもたちが地球の反対側で働かなくてはならないという事態になりかねない」と語った。
米国にはかつて、半導体企業に積極的に投資するベンチャーキャピタルが30社ほどあった。だが、その数は今、5社程度に激減している。その中の1社は、Tan氏が設立したWalden Internationalである。Tan氏は、「個人的には、これは非常に憂慮すべき事態だと感じている。私はこうした傾向を変えたいと考えている」と述べている。Walden Internationalは、米国と中国に数多くの投資を行っている。
Tan氏は、「ベンチャーキャピタルの投資傾向が変わらなければ、米国内の半導体の技術革新が脅威にさらされることになる。そうならないためにも、国内の半導体の新興企業への投資を拡大することが重要だ。中国とインドの政府は、半導体を戦略的産業と位置づけている。半導体企業のほとんどがこの両国に集中する事態は、避けなければならないと考えている」と述べた。
ケイデンスの取締役会は、IntelやQualcommのような大手半導体メーカーに倣って、独自の国際ベンチャーキャピタルファンドの立ち上げを検討しているという。取締役会はこれまで、中核事業以外の分野でリスクを伴う事業を展開することに反対していた。しかし、「利益を生み出すことが明確になれば、新興企業の設計ツールに投資する可能性もある」とTan氏は述べている。
過去数十年の間に、ベンチャーキャピタルの投資対象は、GoogleやFacebookのような、インターネットソフトウェア/サービスを手掛ける企業へと移行した。こうした企業は、半導体の新興企業と比べて、起業コストが低くハイリターンが望める。Tan氏でさえも、中国のソーシャルネットワークサイトで、この2年間で5000万人の登録ユーザーを獲得した「Weibo(微博)」のボードメンバーとして、このトレンドに乗っている。
Tan氏の経営するWalden Internationalは、Ambarellaなど、成長が見込めると判断した半導体の新興企業に対し、2500万米ドル以下の投資を行っている。同氏は、これらの企業について「1億米ドルの以上の企業価値のある利益性の高い企業に成長する」と述べている。
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