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拡張性の高いデータ集録機器を中小企業にも、日本NIの戦略を聞くビジネスニュース 企業動向

日本ナショナルインスツルメンツ(日本NI)のモジュール式データ集録用機器(DAQ)は、これまでは主に自動車や電子機器の分野で使用されてきた。今後は、モジュール式という拡張性の高さを生かし、ライフサイエンスやエネルギーといった分野に裾野を広げるとともに、新たな顧客層を狙う。それが、ベンチャー企業や中小企業だ。同社はこうした企業のユーザーを増やすべく、思い切った戦略を打っている。

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 「一番のメリットは、拡張性と柔軟性の高さである」――。日本ナショナルインスツルメンツ(日本NI)のプロダクト事業部の担当者は、同社のデータ集録用機器(DAQ)の特徴をこのように語る。

 拡張性と柔軟性の高さを生み出す鍵が、「モジュール」と呼ばれるDAQだ。日本NIは、チャンネル数やサンプリング速度、分解能、入出力の電圧範囲などが異なる何十種類ものモジュールをそろえている。用途に合わせて必要なモジュールを必要な数だけ、筐体にセットすればよい。筐体も、Wi-Fi/イーサネット接続が可能なもの、USBに対応するもの、スタンドアロン型を用意している。日本NIは、「例えばオシロスコープでチャンネル数を増やしたい場合、オシロをもう1台買うしかない。当社のDAQならば、モジュールを1個買い足せば済む。用途に合わせてモジュールを変更するというコンセプトのDAQは、National Instruments以外にはないのではないか」と説明する。

 日本NIのDAQは、同社のグラフィカル開発ツール「LabVIEW」を使って、データ集録/解析のプログラミングを行う*1)。「制御プログラムのサンプルもひと通り用意しているので、それを“コピペ”していけば、簡単にプログラムを作成できる」(日本NI)。

*1)チャンネル数が少ない場合などはC言語でプログラミングすることも可能だが、やはりLabVIEWと併せて使用するのが最も使いやすいとしている。

ベンチャー/中小企業のユーザーを増やす

 日本NIが注力するのが、新たな顧客層の開拓だ。日本NIのDAQは自動車や電子機器の分野で使われることが圧倒的に多いが、ユーザーは比較的大手の企業が多い。日本NIはライフサイエンスやエネルギーといった分野でのシェア拡大を狙う。これらの分野には、多くの中小企業が存在する。同社は、これまではあまり視野に入れてこなかった中小企業やベンチャー企業のユーザーを増やすことに特に注力していくという。

 日本NIは、「ベンチャー企業や中小企業では開発スピードが非常に重要になる。拡張性が高い当社のDAQが開発スピードの面で大きく貢献するはずだ」と述べる。ただし、DAQとLabVIEWを購入するのは決して安くはない。「DAQとLabVIEWを使ってみたいけれども予算の関係で手が届かない」。このような声を拾った日本NIは、ベンチャー企業と中小企業を対象に、思い切った戦略を打ち出した。日本NIのハードウェア製品を購入すると、LabVIEWと製品のトレーニングを無償で付与されるというキャンペーンを展開しているのだ。LabVIEWは標準保守/サポートプログラムが付いていて、LabVIEWとトレーニングで約60万円相当になる。キャンペーンの詳細は、日本NIのWebサイトで確認できる。

 日本NIの担当者は、「とにかく、まずは使ってみてほしい。LabVIEWのプログラミングをある程度習得するまでに数週間はかかるが、一度慣れてしまえば使いやすくなるはずだ」と強調する。

 同社は、顧客の開拓によって求められる用途が広がると考え、DAQシリーズの中で最も安価かつ汎用性が高い「Cシリーズ」モジュールのラインアップを増やす方針だ。現在、Cシリーズは65種類ほどをそろえている。同時に、より簡単にDAQを使えるように、ターンキーで動作するようなソフトウェアの開発も考えているという。


日本NIのDAQシステム。用途によって、モジュールを組み込む筐体も選べるようになっている(クリックで拡大)

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