DRAM市場が堅調、需要と供給のバランスが取れた状態に:ビジネスニュース 業界動向(2/2 ページ)
PC市場の低迷や価格の下落など、大きな課題に直面してきたDRAM市場だが、現在は、需要と供給のバランスが取れた状態で、堅調な成長を続けているという。製品価格も、約3カ月の間に大幅に上昇した。
DRAM市場はポストPC時代へ
DRAM市場では、1つの大きな変化が起こっている。DRAMの需要は、かつてはPC分野がほとんどだったが、現在はサーバやモバイル機器にも広がっているということだ。DRAM市場は、こうした変化に適応している。10年前は、DRAMの出荷量(ビット換算)全体の約65%が、デスクトップPCかノートPC向けだったが、現在はこの値は50%以下に下がっている。2014年末にはさらに40%にまで下がると予想される。
一方で、DRAMの出荷量(ビット換算)に占めるサーバやモバイル機器(スマートフォンやタブレット端末など)の割合は増加している。このため、1つのセグメントが窮状に陥ったとしても、DRAM市場が崩壊することはないだろう。
そもそも、PC分野の需要は、DRAM市場を崩壊させるほど大きな割合を占めていたわけではない。サーバやモバイル機器分野も、より複雑な設計が必要な専門性の高い製品を採用し、DRAM製品のコモディティ化を抑制することで、DRAM市場に貢献している。
DRAM生産量の縮小
競争の激しいDRAM業界にとってプラスに作用した変化がもう1つある。
過去2〜3年の間に、数多くのDRAMメーカーが事業規模を縮小したり、業界を去ったりした。台湾メーカーはもはや、かつてのような強力なサプライヤではなくなっている。また、DRAMメーカーとして名をはせたQimondaやエルピーダメモリは破産申請し、他のメーカーに買収された。DRAMメーカーが少なくなれば、生産量の拡大に、より慎重な姿勢が取られるようになり、安定した成長が続くと予想される。
プロセス技術の進歩の減速
さらに、世界DRAM市場にとって追い風となっているのが、DRAMの製造プロセスの進歩が減速していることだ。今のところ、次世代のDRAM製造技術は登場していない。DRAMの製造プロセスを30nm以下(最終的には20nm以下)に微細化するには、数多くの技術的な課題がある。
製造プロセスの進歩が減速しているため、DRAMの出荷量(ビット換算)の成長も鈍化している。これによって、需要と供給のバランスが保たれているのだ。
程よく“供給不足”を保つための課題
DRAMは現在、断続的に供給不足が起こっている。これは、業界にとっては好ましいことだが、供給不足が長く続くと悪影響を及ぼす恐れがある。大規模な供給不足が続けば、さまざまな分野でDRAMに代わる技術が採用される可能性があるからだ。
DRAM業界の最大の関心事が、需要に厳密に対応できるように供給を管理することにあるのは明らかである。DRAMメーカーは2014年には、需要に対応するために製造能力の拡張を真剣に検討する必要に迫られるだろう。しかし、IHS iSuppliは、「供給を適切に管理すれば、DRAM業界は堅調な成長を維持できる」と確信している。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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