ローム、電源ICの事業領域を拡大:ビジネスニュース 企業動向
ロームは、電源用半導体の事業領域を広げている。これまで特定顧客向けにカスタム品を展開していたAC-DCコンバータ用電源ICで汎用品の投入を始めた他、高度な電源回路技術が要求される最先端FPGA向けの電源モジュールを製品化している。
ロームは、パワートランジスタなどの個別半導体から、DC-DCコンバータ、LDO(Low Drop Out)レギュレータなどの電源用デバイスを展開し、アナログパワー技術を長く培ってきた。2013年7月17〜19日に開催された「TECHNO-FRONTIER 2013」(テクノフロンティア2013)でも“アナログパワーのローム”を打ち出しながら、さらにカバー領域を広げる新たな電源用デバイスを紹介した。
AC-DC変換ICに本格参入
その1つが、AC-DCコンバータ用電源ICだ。これまで一部顧客向けにカスタム製品を展開してきたが2013年7月から汎用品としてサンプル出荷を開始し、同年9月から量産をスタートさせる。
第1弾製品として、一挙に24品種を製品化。「最初から多くのラインアップをそろえることで、多くの市場ニーズに応える」(ローム)という狙いを持つ。24品種はいずれも、自社製の低オン抵抗スーパージャンクションMOSFET(以下、SJ-MOSFET)を採用した。FET駆動回路の最適化を実施。その結果、変換効率は、国際規格「Enegy Star 6.0」で要求される86.35%を上回る。AC100V、25WのAC-DC変換アダプターであれば、「87%以上の効率を実現し、周辺部品を最適化すれば90%以上の効率改善も可能」(ローム)。
搭載するSJ-MOSFETは、650V耐圧で、SOP8パッケージでのオン抵抗は4.0Ω。待機時の消費電力は25WのAC-DCアダプターで、AC100V時20mW以下、AC230V時30mW以下といずれもEnegy Star 6.0での要求(100mW以下)を大きく下回っている。
新製品24品種は、出力電力5Wクラスから25Wクラスまでをラインアップ。標準的なDIP7パッケージ品に加え、8Wクラス以下に製品では面実装が可能なSOP-8パッケージ品(6.2×5.0×1.5mmサイズ)も用意した。「中国などアジア市場を中心に家電やACアダプターなどの用途での採用を見込んでいる。さらに1個単位で購入できる販売体制を整え、産業機器市場などへの積極的に拡販していきたい」(ローム)とする。
FPGA向け電源モジュールも初めて製品化
産業機器市場に向けた電源デバイスビジネスでは、産業機器市場で多く使われるFPGAに向けた電源モジュールをロームとして初めて製品化している。
最先端の28nmプロセス技術を用いた最新FPGA用の電源回路設計は、高度なアナログパワー技術が要求される分野だ。そのため、設計開発リソースが限られる産業機器メーカーなどでは、電源ICメーカーや電源モジュールメーカーが製造する特定の最先端FPGAに特化した電源モジュールを外部から調達して使用するケースが増えている。ただ、こうした最先端FPGA用電源モジュール製品の多くは、海外メーカー製電源ICを使用した製品が多かった。
今回、ロームは、大手FPGAベンダーのザイリンクスの販売代理店であるアヴネット・エレクトロニクス・マーケティング・グループ(以下、アヴネット)と連携し、ザイリンクスの28nmプロセス採用FPGA「7シリーズ」「Zynq-7000」の評価キット向け電源モジュールボードを共同開発し、全世界での販売を7月から開始した。ロームによると、世界各地でザイリンクス製品の販売を手掛けるアヴネットのグローバル設計チームと共同開発を行った初の日本メーカーだという。
電源モジュールボードには、先端FPGAで要求される高速過渡応答性に優れる「H3Regテクノロジー」を採用した電源IC「BD95601MUV」「BD95602MUV」を搭載し、入力電圧12VからFPGAが必要とする8種類の電源電圧を高精度に出力する。先端FPGA対応の高速負荷応答を実現しながら、95%という高い変換効率を実現し「パルススキップ動作により、軽負荷時も高い効率を維持する」(ローム)としている。ロームでは、今後より小型のモジュールなどの開発を進めるなどしてFPGA向け電源製品を拡充していく方針で、産業機器や通信機器向け電源IC市場でのビジネス拡大を加速させる。
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