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TOEICを斬る(前編) 〜悪魔のような試験は、誰が生み出したのか〜「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論 ―番外編―(1/3 ページ)

2年にわたる米国赴任の前後で、自分の英語力は全く変わっていない――。その事実を私に冷酷に突き付けたのが、“TOEIC”でした。あの血も涙もない試験は、いったい誰が生み出したのでしょうか。そして、その中身にどれほどの意味があるのでしょうか。

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 われわれエンジニアは、エンジニアである以上、どのような形であれ、いずれ国外に追い出される……。いかに立ち向かうか?→「『英語に愛されないエンジニア』」のための新行動論連載一覧

 この連載を読んでいただいているエンジニアの皆さんで、「TOEIC」をご存じない方はいらっしゃらないと思いますが、一応説明致しますと、TOEICとは、Test of English for International Communicationの略称で、「国際コミュニケーション英語テスト」のことです。

 言うまでもありませんが、「英語に愛されないエンジニア」である私にとって、このTOEICとは悪意と憎悪の対象です。もちろん、私には好きな試験など1つもありませんが、憎悪のレベルにまで至っている試験は、このTOEICだけです。

 私のこの「TOEIC嫌い」を決定付けたのは、10年前に、米国赴任から帰国した直後に受けた受験の結果でした。「赴任前後でスコアが全く変っていない」という現実を突き付けられた時です。

 バカな! と思いました。


画像はイメージです

 仕事では問題ばかりでしたが、2年間の米国生活の衣食住に必要な会話をこなし、必要なら、青い目の、背の高い、でっかい体格のニーチャンと口論までやってのけた、この私の「英語による国際コミュニケーション力」が、公に否定されたのです。

 じゃあ、私が米国赴任の生活で使ってきたあの英語は、コミュニケーションは、何だったのか?

 私が使っていたのは、『英語のような何かの音声信号』だったのか? それを気の毒に思った、私の回りの米国人が『一生懸命、その信号の解読を試みてくれた』……。そういうことなのか?

 「その通り。お前は、他の人には得られない本当に得難いラッキーな2年間もの米国赴任という機会を得ながら、英語コミュニケーションに関して何一つ取得することなく、帰国しただけなのだ」

 ――「TOEIC」は、冷酷にそう言い放ったのです。

終生の敵“TOEIC”

 こんにちは。江端智一です。

 本日は、私の終生の敵“TOEIC”を徹底的に批判……、もとい非難します。

 今回は、エンジニアリング視点がスッポリ抜けて、著しく客観性を欠き、論理的に破綻しているかもしれません。たぶん、これまでの連載の中で、最も読みにくい文章になるだろうと思います。先に申し上げておきますが、今回は「諦めてください」。

 番外編として、このTOEICについて書かせていただくに至った動機は、この連載も終わりに近づきつつあったからです。

 私はムチャを承知の上で、EE Times Japanの担当者の方に、既に自分のホームページで公開している、TOEICに関するコラムの再掲載をお願いしました。

江端:「TOEICめ、うぅぅぅ! 貴様、この間の遺恨覚えたるかーッ! (作者注:上記の赴任帰国後のTOEICスコアのこと)くっ! 放せ! お放しくだされ、担当者殿! あの“TOEIC”の野郎に、一太刀たりとも斬りつけずにこの連載が終わったら、私は死んでも死に切れませぬ。武士の、武士の情けでござる」

担当者殿:「江端殿。契約が、契約書がございますぞ!」(作者注:本当にあります)

というバトルを経ることもなく、あっさり許可を頂きました。担当者と、EE Times Japan編集部の皆さんに、この場を借りてお礼申し上げます。


 さて、TOEICに話を戻します。

 「TOEIC受験のしおり」には、「TOEICとは、英語によるコミュニケーション能力を正確に測定するための共通尺度として実施される世界共通のテストシステムです」と書かれていました。

 かつては、それぞれの企業が、独自の英語検定システムを持っていたようですが、このような制度はほとんどなくなり、現在は、TOEICを社内で実施して社員の英語力の指標としているようです。

 TOEICを知らない方もいらっしゃると思いますので、簡単に説明します。

 TOEICは、他のテストのように合否を判定するのではなく、スコアという形で結果が示されるテストです。満点は990点で、スコアは一桁まで正確に出されます。

 そして、拷問のように、嫌がらせのように膨大な量の設問がある、長時間(2時間)のテストです。

 最初の45分間は、ベラベラ、ベラベラと、止まることなく一方的に流れ続ける英語を聞かされ(リスニングセクション)、残りの75分は、パンフレット並みにぶ厚い英語の冊子をひたすら読まなければなりません(リーディングセクション)。

 しかも、問題が恐ろしく意地悪で、根性悪で、ひねくれています(後述します)。「回答者に理解してもらおう」などという意図のかけらもなく、どす黒い悪意に満ち、「コミュニケーションテスト」と言いながら、私たち受験者とコミュニケーションする意図を最初から放棄している――。そんなテストです。

 ……とまあ、このような「江端の『悪意』フィルター」を介した説明では、訳が分からないと思いますので、TOEICについてちゃんと知りたければWikipediaを読んでください。

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