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TOEICを斬る(前編) 〜悪魔のような試験は、誰が生み出したのか〜「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論 ―番外編―(3/3 ページ)

2年にわたる米国赴任の前後で、自分の英語力は全く変わっていない――。その事実を私に冷酷に突き付けたのが、“TOEIC”でした。あの血も涙もない試験は、いったい誰が生み出したのでしょうか。そして、その中身にどれほどの意味があるのでしょうか。

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TOEICは、「いじめ」である

 要するに、TOEICというテストの位置付けは、「不必要にオーバースペックな北米圏英語への隷属」、もっと単純に言うと「いじめ」なのです。

 多くの日本人が、なぜこのような「いじめ」を好きこのんで受けに行くのか、私には理解不能です。私のように業務命令で受験させられているか、今の若い人であれば入社の条件になっているのかもしれません。

 大体、このようなテストのスコアが高いということは、自分自身が『ああああっ! もっとぉ! もっとぉいじめてぇ〜〜!!』と叫ぶマゾヒスティックな変態的性癖嗜好(しこう)者であることを、満天下に向けて公表しているようにも思えるのです。



画像はイメージです

 エンジニア視点で冷静に考えてみれば、TOEICスコアの“良し/あし”は、英語を使う生活の“楽/不便”におおむね連動しているのは事実でしょう。

 あの、悪魔のようなTOEICのリスニングセクションを完璧に聞き取れる人なら、同時に10人の日本人と会話できるスキルを有しているに違いありません。これはもう、「努力」の範疇(はんちゅう)を超える話です。

 「英語に愛されない」ということは、「TOEICからコケにされる」ということと同義ですが、もう、このようなことに腹を立てても仕方ありません。

 そもそも、私には「TOEICにコケにされる」程度の能力しかないからこそ、この連載で紹介した、多くの姑息(こそく)な「コミュニケーション『アシスト』手段」を生み出してきた、というのもまた事実なのですから。


 今、あなたの前には、2つの道があります。

(1)真面目に英語を勉強してTOEICのスコアを上げ、基本と正道の精神に乗っ取り、英語のコミュニケーションスキルを上げるために、たくさんのお金と時間と努力を注ぎ込む。ただし、どれだけお金と時間をかけても、実際にスキルが上がるかどうかは、一切保証されていません。

(2)「英語に愛されない」ことを認めて、私が提唱し続けてきた姑息な「コミュニケーション『アシスト』手段」による場当たり対応で、エンジニア人生の延命を図る。

 どちらを選ぶのも、あなたの自由です。

 ただ、私の場合は、私の2年間の米国赴任のコミュニケーション力を真正面から否定した「TOEIC」とは、永久に和解する予定がないという「事実」があるだけです。


 さて、今回は、客観性を排して、悪意と憎悪を込めて「TOEIC批判」……もとい、「TOEIC非難」を行いましたが、TOEICを否定する以上、代替手段を提示するのが正しいエンジニアの姿であるべきです。

 後編では、私が自信を持って世界に向けて提唱するテスト

「TOPIC(Test of PLAYING for International Communication):
国際コミュニケーション“演劇”テスト」

について、その内容をお話したいと思います。


本連載は、毎月1回公開予定です。アイティメディアIDの登録会員の皆さまは、下記のリンクから、公開時にメールでお知らせする「連載アラート」に登録できます。


Profile

江端智一(えばた ともいち) @Tomoichi_Ebata

 日本の大手総合電機メーカーの主任研究員。1991年に入社。「サンマとサバ」を2種類のセンサーだけで判別するという電子レンジの食品自動判別アルゴリズムの発明を皮切りに、エンジン制御からネットワーク監視、無線ネットワーク、屋内GPS、鉄道システムまで幅広い分野の研究開発に携わる。

 意外な視点から繰り出される特許発明には定評が高く、特許権に関して強いこだわりを持つ。特に熾烈(しれつ)を極めた海外特許庁との戦いにおいて、審査官を交代させるまで戦い抜いて特許査定を奪取した話は、今なお伝説として「本人」が語り継いでいる。共同研究のために赴任した米国での2年間の生活では、会話の1割の単語だけを拾って残りの9割を推測し、相手の言っている内容を理解しないで会話を強行するという希少な能力を獲得し、凱旋帰国。

 私生活においては、辛辣(しんらつ)な切り口で語られるエッセイをWebサイト「江端さんのホームページ」で発表し続け、カルト的なファンから圧倒的な支持を得ている。また週末には、LANを敷設するために自宅の庭に穴を掘り、侵入検知センサーを設置し、24時間体制のホームセキュリティシステムを構築することを趣味としている。このシステムは現在も拡張を続けており、その完成形態は「本人」も知らない。



本連載の内容は、個人の意見および見解であり、所属する組織を代表したものではありません。



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