“汎用CPUだけでは差異化できない”――DSPによる組み込みコンピュータビジョン提案:ビジネスニュース 企業動向
CEVA(シーバ)は2013年8月、画像処理/認識用DSPコア製品に関する記者説明会を開催し、スマートフォンなどモバイル機器での、DSPを活用した本格的なコンピュータビジョンの導入を提案した。
CEVA(シーバ)は、携帯電話機向けベースバンドプロセッサなどに向けたDSPコアIPベンダーである。「DSPコアIPベンダーとして世界トップシェアを誇る」(日本シーバ社長の日比野一敬氏)と言い、累計45億個の半導体デバイスに同社DSPコアが採用されているとする。CEVAでは、用途特化型のDSPコアの開発を実施し、主にベースバンド向け、オーディオ/音声処理向け、画像処理/認識向けの3分野のDSPコアIP製品を取りそろえる。
画像処理用DSPの需要拡大に期待
この3分野の中で、今後最も高い割合での成長を見込んでいるのが、画像処理/認識向けDSPコア製品ビジネスだ。スマートフォンなどモバイル機器やカーナビゲーションシステムなど各種組み込み機器で、コンピュータビジョンの応用拡大が期待されるためだ。顔認識や指紋認証によるセキュリティ機能、ジェスチャによる新たなユーザーインタフェース(UI)、画像認識を使った次世代運転支援システム(ADAS)など、組み込み機器ではコンピュータビジョンを応用した新機能の搭載が多数、検討されている。
しかし、組み込み機器でコンピュータビジョンを実現するには、課題がある。その代表的な課題が、リアルタイムな画像認識を実現する処理性能をどうやって実現するかだ。現状、スマホなどで顔認識などの処理を行う場合、アプリケーションプロセッサをフルに動作させなければならない。今後、さらに高速、複雑な画像処理を行うためには、さらにプロセッサコアの性能を高める必要がある。そうなれば、必然的に消費電力やコストは増大していく。
そこでCEVAが提案しているのが、画像処理専用DSPの搭載だ。最新世代画像処理DSPコア「MM3101」では、電池駆動型のモバイル機器を含め組み込み機器に導入しやすい、性能、消費電力、コストを実現しているという。
消費電力、CPUベースに比べ「1/10〜1/20」
MM3101は、CPUコアやGPUコアに比べ、1/5から1/13程度のダイ面積/コスト、1/10から1/20程度の消費電力で画像処理が行えるという。加えて、専用ハードウェアなどを使用せず、CPU/GPUコアと同様に完全なソフトウェア処理であり、柔軟性も変わらないという。
MM3101は、既にスマートフォン端末メーカー2社での採用が決定している。
Apple、Samsungに対抗するためにも……
CEVAのコーポレートマーケティング担当バイスプレジデントを務めるEran Briman氏は、「ご存じのように、スマホの世界市場で2強であるAppleとSamsung Electronicsは、アプリケーションプロセッサ(以下、AP)を自社で製造している。一方でそれ以外の端末メーカーの多くは、Qualcommなどのベンダーが提供する汎用のAPを使っている。そのため、スマホの重要な部分を占めるAPで、2強と差異化できずにいるのが実情だった。しかし、昨今では、オリジナルのAPを開発し、独自性を打ち出そうとする動きが活発になっている。その中で、当社のMM3101が付加価値と評価され、採用が早々と決定した」と語る。
コスト、消費電力での制約が多い組み込み機器でも、より高性能なコンピュータビジョン機能が搭載できるMM3101だが、CPUコアと対比した場合に、欠点も存在する。それは、ソフトウェア開発の複雑性だ。汎用のCPUコアと違い、DSP、MM3101に合わせたソフトウェア開発が必要になる。ソフトウェア開発リソースが決して大きくない組み込み分野で、新たにDSPを導入する上で大きなネックになる。
ソフトウェア開発環境を拡充
そこでCEVAでは、MM3101で各種コンピュータビジョン機能を実現する機能ソフトウェアを自社で開発して提供することで、組み込み分野でもMM3101を導入しやすい環境作りを行っている。2013年8月には、デジタル式の強力な手振れ補正機能(デジタルビデオスタビライザー、DVS)を実現するソフトウェアの提供を開始した。
このDVSソフトウェアは、4軸での手振れ補正機能や、CMOSイメージセンサーで生じるローリングシャッター現象の補正機能を低消費電力で実現できる。「CPUでデジタル式手振れ補正処理を行えば1W程度の消費電力を要した」(同氏)という中で、MM3101とDVSソフトウェアを使えば、30フレーム/秒の1080pビデオでも35mW以下の消費電力で動作できるという。「実際の撮影映像を見てもらえれば、当社の手振れ補正機能は、最新のスマホに搭載されている光学式、デジタル式の手振れ補正機能よりも優れていることが、すぐに理解してもらえるほど強力だ」とする。
CEVAでは、DVS以外にも、30mW未満の消費電力で4枚の5Mピクセル画像から1枚の20Mピクセル画像を生成する超解像アルゴリズムなど、各種ソフトウェアを開発し、提供を行っている。さらに、MM3101上でのソフトウェア開発をより簡素化するソフトウェア開発キット(SDK)も2013年8月から提供を開始した。Briman氏は、「産業機器分野なども含め幅広い組み込み機器でMM3101の搭載が拡大するよう、今後さらにソフトウェア開発環境を拡充していく」と語っている。
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