【NIWeek 2013】組み込み機器制御でPLCに代わるソリューションを、“ARMプロセッサ+28nm FPGA”が鍵に:テスト/計測
ナショナルインスツルメンツ(NI)は、モジュール式計測/制御用ハードウェア「NI CompactRIO」の新製品を発表した。ARMの「Cortex-A9」とザイリンクスの28nm FPGA「Artix-7」を1チップにしたSoC(System on Chip)を搭載していることから、高速な処理が可能になっている。NIは、「CompactRIOは、組み込み機器の制御に使われているPLC(Programmable Logic Controller)に代わるソリューション」だと提案する。
2013年8月6〜8日(現地時間)にテキサス州オースチンで開かれたNational Instruments(NI)のテクニカルカンファレンス「NIWeek 2013」。初日の基調講演では、同社のシステム開発ソフトウェアの最新版「LabVIEW 2013」などともに、モジュール式計測/制御用ハードウェア「NI CompactRIO-9068(cRIO-9068)」が発表された。
ハード/ソフトとも、これまでのcRIOシリーズとは一線を画する
「NI CompactRIO(cRIO)」シリーズは、プロセッサとFPGA、モジュール式の入出力インタフェース部(I/Oモジュール)にリアルタイムOSを組み合わせた制御・監視システム構築用ハードウェアである。100種類以上ものI/OモジュールをそろえたNIの主力製品の1つだが、今回発表した「cRIO-9068」は、その中の高コストパフォーマンス製品として位置づけられる。これまでの同クラスのcRIOシリーズと比較すると、ハードウェア面でもソフトウェア面でも大きく変化している。
ハードウェアアーキテクチャ面の特徴は、XilinxのSoC(System on Chip)「Zynq-7020 All Programmable SoC」を採用したことだ。同SoCは、ARMのデュアルコアプロセッサ「Cortex-A9」(動作周波数は667MHz)と、28nmプロセスを採用したXilinxのFPGA「Artix-7」を1チップに搭載したものである。
cRIOでは従来、CPUとFPGAは別のチップで構成されていたが、今回はZynq SoCの採用でプロセッサとFPGAがARMの高速インタフェース「AXI」で高速接続されるため、パフォーマンスは約4倍向上した。
ソフトウェア面での変化は、NIとしては初めてリアルタイムOSとしてLinuxベースのものを採用したことだ。これによって、従来はLabVIEWでしかプログラミングできなかったのが、オープンソース統合開発環境である「Eclipse」を使ってC/C++言語でもプログラムできるようになった。
NIWeek 2013の基調講演では、cRIO-9068のデモンストレーションとして、台湾Master Machineryの半導体チップの検査装置が紹介された。cRIO-9068は、同装置のモーターの制御に使われている。以前は別の装置で制御していて、チップ検査速度は1時間当たり1000〜2000個だった。cRIO-9068の前世代品に当たる「NI CompactRIO-9074」を使ったところ、毎時1万4000個の処理が可能になり、さらにcRIO-9068に変更することで毎時2万個に向上したという。
cRIOが次世代の洗練された制御システムを可能にする
NIのEmbedded Control & Monitoring Marketing Program, Senior Group ManagerのAhmed Mahmoud氏は、「現在進行している第4次産業革命(「産業革命 4.0」)では、オペレータと機械がシームレスにつながるような、洗練された、だが複雑な革新的制御システムが求められるようになっている」と語る。
Mahmoud氏は「NIは、LabVIEWとcRIOで構成されるプラットフォームこそが次世代システムを実現するのに最適であると確信している。製造現場の生産機械などの組み込み制御システムにおいてPLC(Programmable Logic Control)が果たした役割を、次世代のシステムにおいてはcRIOが果たしていく」と主張した。
前述したように、cRIOシリーズのプログラミングにはLabVIEWを使用する。だが、組み込み機器の設計エンジニアの多くはC/C++を使っていて、それらで記述されたプログラム資産をたくさん持っている。特に通信やネットワーク分野では、C/C++で書かれたオープンソースIPが広く利用されている。
C/C++で書かれたプログラムをLabVIEWで書き直すのは膨大な手間がかかるが、cRIO-9068がリアルタイムLinuxを採用したことで、C/C++によるプログラミングが可能になり、これまでのプログラム資産を有効に活用できる。加えて、活発な情報交換が行なわれているLinuxのユーザーコミュニティを利用できることもあり、cRIOを採用した課題の解決が加速化することをNIは期待している。
「NIWeek 2013」の展示会場に設置された大型のデジタルサイネージでは、cRIOが紹介されていた。画面にタッチして、cRIOを回転させて好きな角度で表示したりスペックの説明を表示させたりできる(クリックで拡大)
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