全ての課題解決はデータ集録から、“第4次産業革命”を支えるプラットフォームの仕組みとは:NIWeek 2013現地リポート
現実世界と仮想世界がネットワークでつながる第4次産業革命は、あらゆる事象を測定し、データを集め、ITで処理するというサイクルを生み出す。このサイクルで蓄積される膨大なデータの中から有用な情報を引き出すには、物事を“正しく測定する”ことが大前提になる。では正しく測定するには、どうすればよいのか。NIは、NI CompactDAQと「NI LabVIEW」とで構成されるプラットフォームを使って、その方法を示した。
1780年代、イギリスでは蒸気機関の改良によって軽工業が飛躍的に発展する第1次産業革命が起こった。その後、1870年代には食品保存技術や生産/加工技術が発達した第2次産業革命が、1970年代には、自動車の製造工場でPLC(Programmable Logic Controller)を使ったデジタル制御が導入されるなど、エレクトロニクスとITによる制御の自動化に象徴される第3次革命が発生している。
そして現在、「第4次産業革命が進行している」と語るのが、ナショナルインスツルメンツ(NI)の社長兼CEOを務めるJames Truchard氏だ。
Truchard氏は、NIが本社を構える米国テキサス州オースティンで開催されたテクニカルイベント「NIWeek 2013」の基調講演に登壇し、「『Industrie 4.0』、すなわち第4次産業革命の重要な要素となるのが、“Cyber-Physical Systems”だ」と語った。
Cyber-Physical Systemsとは、いったい何だろうか。
これは、現実世界の組み込みシステムを強力なコンピューティング能力と結び付け、より効率的なサービスやシステムを実現するものだ。現実世界の事象を測定し、データ化し、それをITで処理し、現実社会をより良い方向へコントロールする。モバイル機器から家電まで、さまざまな機器に通信機器を搭載してネットワーク化する「モノのインターネット(IoT:Internet of Things)」や「M2M(Machine to Machine)」と言い換えることもできるだろう。
Truchard氏は、Cyber-Physical Systemsを「現実世界の機器と仮想世界の機器を融合するもの」とも定義している。同氏は例としてAppleの「iPhone」を挙げた。iPhoneでは、温度計、電卓、テレビ、オーディオプレーヤといった現実世界の機器が、スマートフォン上に仮想的に実現されている。
プラットフォームが第4次産業革命の鍵に
Truchard氏によれば、現実世界と仮想世界の機器を融合するCyber-Physical Systemsで重要になる要素が「プラットフォーム」だという。例として挙げたiPhoneも、「iOS」というプラットフォームによって、温度計やオーディオプレーヤなど、さまざまな機能が実現されている。
NIもこのような強力なプラットフォームを持っている。NI CompactDAQを始めとするモジュール型の計測/制御用ハードと、それらをプログラミングするシステム開発ソフトウェア「NI LabVIEW」だ。
30年のノウハウを凝縮
LabVIEWが登場して約30年。その最新版となる「NI LabVIEW 2013」では、30年分のノウハウを凝縮した、“使いやすさ”を重視した機能を充実させた。
例えば、実際にアプリケーションを作成する際に“ひな型”として使用できる「テンプレート」や「サンプルプロジェクト」を多数提供しているが、LabVIEW 2013では、これらを徹底的に見直した。生産工場やインフラ設備の監視や制御を行う産業制御システム(SCADA:Supervisory Control And Data Acquisition)や、NIの組み込み機器向けのリアルタイムテストのシーケンサ作成用のサンプルプロジェクトが追加された。また、設計ブロックの任意の位置にコメントを付けられる機能も追加されている。
データを“正しく”取るとは?
解析ツールについては上記で述べたが、現実世界のあらゆる事象を測定し、データを集録し、それらを解析して活用するというサイクルを生み出すCyber-Physical SystemsやIoT、M2Mでは、解析と同様に重要になるものがある。それが“測定”だ。Truchard氏に続いて基調講演に登壇したバイスプレジデントのEric Starkloff氏が「全てのエンジニアリングの課題解決は、測定から始まる」と強調したように、Cyber-Physical Systemsでは、「測定する」という、単純にも見える行為が全ての出発点になる。
Starkloff氏は、測定において最も重要なことは、“正しいデータが取れること”だと続けた。家電の電磁波やジェットエンジンの温度、電車の走行速度、建物の振動などが正しく測定できなければ、人命にかかわるほど重大な問題につながる可能性がある。Starkloff氏も基調講演において「われわれの周りの世界の事象をいかに正確に測定できるかが、世界を進歩させる鍵となる」と語っている。
では、正確に測るためには、どんな測定機器が必要になるのであろうか?
NIのDAQプロダクトマーケティング部でディレクタを務めるChad Chesney氏は、「データを正しく計測するために、測定機器をできるだけ測定対象に近づけてデータを集録したいというニーズが多かった」と語る。だが、これは計測器が過酷な環境に置かれる可能性が高くなるということを意味している。
50 Gの衝撃に耐える
こうした要望を受けて、NIは計測/データロギング向けのモジュール式データ集録ハードウェア「NI CompactDAQ(Data Acquisition)」の新機種として、堅牢性を強化した「NI cDAQ-9188XT」を追加した。NIのモジュール式計測ハードウェアは、シャーシ(筐体)とモジュールから構成されるが、NI cDAQ-9188XTはシャーシに当たる。
NI cDAQ-9188XTは、加速度5Gの対振動性能と50 Gの耐衝撃性能を備えている。動作温度範囲も−40〜70℃と、従来品の0〜55 ℃/−20〜55 ℃よりも広くなった。
基調講演では、その堅牢性を示すデモが披露された。動作中のNI cDAQ-9188XTを入れた箱状のコンクリートブロックを、ハンマーでたたき壊すというものだ。NI cDAQ-9188XTとコンクリートブロック、ハンマーにはそれぞれ衝撃センサーが取り付けられていて、ブロックをたたき壊したときに受けた衝撃を測定できるようになっている。計測した結果、ハンマーには約550 G、コンクリートブロックには約3400 Gの衝撃が加わった。NI cDAQ-9188XTが受けた衝撃は設計値を大幅に上回る511 Gに達したが、その後も問題なく動作していた。
世界最速の“クルマ”を目指すチームも利用
では、実際にはどれくらい過酷な環境で使用されたことがあるのだろうか。“地上最速のクルマ”を目指すエンジニアチームNorth American Eagleの実験が実例として取り上げられた。North American Eagleは、米空軍から払い下げられたロッキードの超音速ジェット戦闘機「F-104A Starfighter」から主翼、水平尾翼を取り去り車輪を付けた“ジェットカー”を使って“世界最速のクルマ”を目指している。現在は、公式の世界記録である時速763マイル(時速1228 km)を破り、時速800マイル(時速1287 km)の達成を狙うべくテストを繰り返している。
North American Eagleは、この“ジェットカー”にNI cDAQ-9188XTを積み込み、各部の振動、ゆがみ、油圧、動圧、ステアリングデータを計測して状態を把握するとともに、集録したデータをシミュレーション結果と比較するなどしてフィードバックに利用している。速度のテストは砂漠で行われている。高温、高塵埃(じんあい)の環境は、動力のジェットエンジンでさえ厳しい環境だ。ジェットカーに積み込む計測器には、これに加えて振動という悪条件も重なる。North American Eagleは、以前は別の計測器を使用していたが、過酷な条件に耐えられずに走行中に計測できなくなってしまい、NI cDAQ-9188XTを採用したという。
堅牢性に加え、NI cDAQ-9188XTにはウオッチドッグタイマーも新たに追加された。NI CompactDAQは、ビルなどの各フロアに置いて振動を計測するといった分散化した計測システムも用途の1つだが、ウオッチドッグタイマーを使って、地震などで停電した場合などでもデータを失うことなく保存するといった機能を実現できる。
このようにNIは、Cyber-Physical Systemsの要となるプラットフォームをソフトウェアとハードウェアの両面から強化した。Cyber-Physical Systemsの時代が本格的に到来すれば、“正しく測定する”こと、つまりNIのデータ集録機器はますます重要になる。NIのプラットフォームは、第4次産業革命の推進に大きな役割を果たすことになるだろう。
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提供:日本ナショナルインスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年9月30日