ロームとデンソー、東芝、三菱電機……国内パワー半導体再編の行方:電子機器設計/組み込み開発メルマガ 編集後記
デンソーがロームに対して買収提案を行った――。2026年3月6日、日本経済新聞が報じたこのニュースは、国内パワー半導体業界に大きな波紋を広げました。
この記事は、2026年3月9日発行の「電子機器設計/組み込み開発 メールマガジン」に掲載されたEE Times Japan/EDN Japanの編集担当者による編集後記の転載です。
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ロームとデンソー、東芝、三菱電機……国内パワー半導体再編の行方
デンソーがロームに対して買収提案を行った――。2026年3月6日、日本経済新聞が報じたこのニュースは、国内パワー半導体業界に大きな波紋を広げました。また、同月2日には日刊工業新聞が、三菱電機がパワー半導体事業の再編に向けて東芝と協議を開始したと報じました。近年、国内パワー半導体業界では企業規模の問題や再編の必要性が繰り返し指摘されてきました。しかし実際には大きな動きには至らず、各社がそれぞれの戦略を模索する状況が続いていました。そうした中で相次いだ今回の報道は、この再編議論が現実の企業戦略として動き出す可能性を示したものといえます。
日本にはパワー半導体分野で競争力を持つ企業が多く存在します。しかし近年は競争環境が急速に厳しさを増していて、業界では再編の必要性がたびたび指摘されてきました。背景にあるのは規模の問題です。日本企業は技術力では高い評価を受けているものの、その規模ではトップを走る欧米の大手メーカーに及ばないという課題があります。
市場調査会社Omdiaの2024年のパワー半導体(ディスクリートおよびモジュール)の世界ランキングを見ると、トップ10には三菱電機(4位、シェア4.6%)、富士電機(5位、3.9%)、東芝(10位、2.6%)の3社が入っています。しかし首位のドイツInfineon Technologiesはシェア17.4%と突出しており、日本企業との差は小さくありません。さらに近年は中国勢の存在感も急速に高まっています。
左がOmdia調査によるパワー半導体企業ランキングトップ10。Infineon Technologiesは決算説明会などでそのシェアをたびたびアピールしている[クリックで拡大] 出所:Infineon Technologies
こうした状況を受け、日本企業の間では再編の必要性を指摘する声が以前から上がっていました。三菱電機社長の漆間啓氏もメディアインタビューで業界再編の必要性に言及していて、各社との連携を模索しているとされています。また日本経済新聞は今回の報道の中で、ローム社長の東克己氏が「日本のメーカーは規模が小さく、固まらないと世界では戦えない」といった趣旨の発言をしてきたことにも触れています。
政府もこうした問題意識を共有しています。経済産業省は補助金を背景に、東芝とローム、デンソーと富士電機の連携を製造面で後押ししてきました。また同省が2025年12月にまとめた「半導体・デジタル産業戦略の今後の方向性」では、パワー半導体領域における「規模」の確保を重要課題と位置付け、既存の連携(ロームと東芝、デンソーと富士電機)をベースにさらなる国内連携や再編を促す方針を示しています。
パワー半導体に関する今後の方向性として、既存の連携(ロームと東芝、デンソーと富士電機)をベースにさらなる国内連携や再編を促す方針を示している[クリックで拡大] 出所:経産省「半導体・デジタル産業戦略の今後の方向性」
ロームと東芝の製造協力では、ローム子会社ラピスセミコンダクタの宮崎第二工場(宮崎県国富町)で炭化ケイ素(SiC)パワー半導体を、東芝デバイス&ストレージ(D&S)傘下の加賀東芝エレクトロニクス(石川県能美市)でシリコンのパワー半導体をそれぞれ生産する形で連携しています。
さらに2024年5月には、研究開発や設計、調達、物流、販売など半導体事業全般にわたる協力の検討を進めることも発表しました。ただ、この協議は思うように進展していないとされています。加えて東芝D&Sが、中国SiCウエハーメーカーのSICCと技術協力を発表したことで、両社の関係が微妙になったとも報じられました(その後、東芝D&SはSICCとの協業を破棄したとされています)
デンソーの狙い、ローム事業への影響は
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