ルネサス、統合コックピット向けソリューションでカーナビ用SoC「シェア75%維持目指す」:プロセッサ/マイコン(2/2 ページ)
ルネサス エレクトロニクスは車載情報機器向けSoC「R-Car」の第2世代シリーズのミッドレンジ向け製品「R-Car M2」を発表した。同SoCは、パートナーとの連携を図りながら、ソフトウェアやツール類と組み合わせた提案を行い拡販する方針。現状、「ナビゲーション向けSoCで世界シェア75%」(同社)というポジションの維持を狙う。
車両メーカーのデザイナーでも開発しやすいツール
統合コックピットは、従来のスタンドアロン型カーナビシステムと異なり、ユーザーインタフェースなどデザイン的な開発が機器/電装品メーカーから自動車メーカーへ移ることも想定し、「エレクトロニクスに詳しくない車両メーカーのデザイナーでも開発しやすいツールも、R-Car M2に最適化されたものがパートナーから提供される」(自動車ソリューション事業部自動車ソリューション第三部の吉田正康氏)という。
さらにエコシステムの強化だけでなく、「すぐに使えるプロットフォーム・ソリューション」(大村氏)を狙い、デバイスにも工夫を施す。R-Car M2は、ハイエンド向けのR-Car H2の「サブセット」(吉田氏)であり、R-Car H2の一部機能を省略し、価格を抑えたシステムに適した構成となっている。この一部機能を省略して、シリーズ展開する形は、前世代の「R-Car H1」と「R-Car M1」でも同様だったが、「従来は、一部機能を省略するとともに、一部の機能をそのグレード、価格帯に合わせて作り替えた部分もあった」(ルネサスモバイル モバイルマルチメディア事業本部SoC事業部CIS設計部長の松本芳幸氏)という。その一方で、R-Car M2は、「R-Car H2の完全なサブセットで、R-Car M2では作り替えた部分はない」(松本氏)という。
「ソフトを作り直す必要がない」
具体的には、従来は、メモリバスなどの内部バスを、ハイエンド品では64ビットだったものを、ミドルエンド、ローエンド品では、オーバースペックとして32ビットバスに作り替えるなど、デバイスとしての最適化を施していたという。しかし、デバイスとしてのコストは最大限低減されるものの、内部バスの帯域幅が変わることでソフトウェアの作り直しが必要になった。「従来は、ハイエンド品で使用したソフトを、機能の似たミドルエンド品に流用しようとしても、結局、1から作り直す必要があった」(松本氏)とする。今回のR-Car M2は、デバイスとしてのコストは多少アップするものの、ソフトウェアの変更が必要となる部分は全てR-Car H2と共通にし、「R-Car H2で開発したソフトウェアを一切、変更せずに搭載できるようになった」(松本氏)。ソフトウェア開発費の増大というシステム開発側の課題を解決する“ソリューション”をデバイス設計レベルから徹底した点も、第2世代R-Carシリーズの特色となっている。
R-Car M2は、R-Car H2同様の28nmプロセスを採用し、CPUコアは、ARM Cortex-A15コアを2個搭載する。なお、R-Car H2は、Cortex-A15を4コア、Cortex-A7を4コア搭載する「big.LITTLE」構成を採用していた。「R-Car H2で搭載した高度な画像認識処理を行うための回路を、R-Car M2では省略した」(松本氏)と、R-Car M2とR-Car H2の主な違いを説明する。
ただ、第1世代R-Carシリーズのハイエンド品であるR-Car H1と比較した場合、R-Car M2のCPU性能はほぼ同等で、グラフィックス処理性能は約2倍、メモリ性能でも約1.5倍とし、ミドルエンド向け製品ながら、高い性能を保持している。
パートナー数を増やす
ルネサスでは、R-Carシリーズ用ソフトウェアやツールなどを提供するパートナー企業と構成する「R-Carコンソーシアム」の活動を積極的に行いながら、R-Car M2の拡販を実施していく。吉田氏は、「R-Car M2の製品化を契機に、現在99社のコンソーシアムのパートナー企業数を2013年3月末までに120社に増やしたい」という。特に現在15社となっている海外パートナー企業数を、30社に倍増させる計画で、海外での“プラットフォーム・ソリューション”提案体制の強化を目指す。大村氏は、「現状、ナビゲーション向けSoC市場で、当社は世界シェア75%を獲得している。R-Car M2などをベースにした“プラットフォーム・ソリューション”の提案で、シェア75%を維持していく」と語った。
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