低価格水晶のクロックをあらゆる周波数の高精度クロックに変換するICが登場:タイミングデバイス技術
IDT(Integrated Device Technology)は2013年10月17日(米国時間)、低価格な水晶振動子のクロックから、あらゆる周波数の高精度クロックを出力する新しい周波数変換器「第3世代ユニバーサル周波数変換器(UFT)ファミリ/IDT 8T49N28x」を発表した。同社は、周波数変換器を含むタイミング用ICで「世界トップシェア」とし、今回の新製品の投入により「リーダーとしての地位をさらに強化する」とする。
IDT(Integrated Device Technology)は、民生機器、通信インフラ、エンタープライズコンピューティング関連の3つの市場をターゲットに、インタフェース、アナログ/電源、タイミングの3つの半導体製品分野でビジネスを展開している。
その1つであるタイミングIC市場では、世界トップシェアを確保。IDTのタイミングおよび同期製品部門でシステムアーキテクチャディレクタを務めるイアン・ドブソン氏は、「世界シェア2〜5位の4社の合計値よりも多い26%のシェアを獲得している」とする。
「タイミング分野で唯一の“ワンストップ・ショップ”」
シェア首位とするタイミングIC市場での強さの理由としてドブソン氏は、「タイミング分野で唯一の“ワンストップ・ショップ”を実現できている製品構成の広さが強みになっている」とする。その充実した製品構成をさらに広げ、「リーダーとしての地位をさらに強化する」ための新製品が「第3世代ユニバーサル周波数変換器(UFT)ファミリ/IDT 8T49N28x」だ。
この新製品の特徴は、ソフトウェアプログラムで「あらゆる周波数に変換できる」というフレキシビリティ、柔軟性だ。そのため、メインターゲットであるイーサネットルータや無線基地局といったエンタープライズ機器、通信インフラだけでなく、医療機器や産業機器など各種組み込みシステムにも応用可能な製品となっている。前世代の第2世代UFTも「出荷したうちの5割は、エンタープライズ、通信インフラ向け以外の用途」とし、幅広い用途分野に適用できる点も第3世代UFTがIDTのタイミング市場における地位向上を期待する背景になっている。
第3世代UFTは、0.18μmプロセスを使用していた前世代に対し、0.13μmプロセスに変更したことから、出力クロックのRMSジッタ(12KHz〜20MHz時)を前世代の0.5psから0.3psまで向上した。各種機能を集積化することにより、さらに高い柔軟性を備えることが可能になった。特に周波数変換器の主要回路である分数分周回路に新たな独自技術を導入し、あらゆる周波数を最大8つまで出力できるようになった。
安価な10M〜40MHz水晶クロックから8KHz〜1GHzクロックを出力
入力に安価な10M〜40MHzの水晶振動子のクロックを使用して新製品を周波数シンセサイザとして機能させた場合も、8KHz〜1GHzの出力クロックを合成できる。また、周波数変換器として利用した場合、1つのPLL(位相同期回路)につき、最大4つの8kHz〜875MHzのクロックを受け取り、必要に応じクロックを切り替えながら8KHzから1GHzのクロックを出力できる。2個のPLLを内蔵した製品もあり、1デバイスで送受信パス双方に対応することもできる。出力やPLLの設定は、ソフトウェアプログラミングで行え、IDTではソフトウェアツール「IDT Timing Commander」を用意し、ソフトウェア開発をサポートしている。出力は、LVPECL、LVDS、1対のLVCMOSの信号として個別にプログラムできる。
「最大2個のPLLを内蔵したことなどから、タイミング回路の受動部品数を大きく抑えられるようになる。加えて、ソフトウェアで各種設定が行えるため、機種や製品世代にまたがって、クロック回路を共通化でき、設計コストなどのさまざまなコスト低減、システムサイズ削減に貢献できる製品だ」(ドブソン氏)としている。
新製品は、PLL1個搭載の8T49N281iとPLL2個搭載の8T49N282i/8T49283iの計3品種ある。8T49N281iと8T49283iは、8mm角サイズの56ピンVFQFPNパッケージを、8T49N282iは10mm角サイズの72ピンVFQFPNパッケージを採用している。
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