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アプリックス、1個300円の“Beaconモジュール”で採用数伸ばすビジネスニュース 企業動向

アプリックスは、Bluetooth Smart対応ビーコンモジュールを1個300円という低価格設定で展開している。Bluetoothによるビーコンは、アップルのiOS7が対応したことで新たなマーケティングツールとして注目を集めており、アプリックスでは、モジュールとともにセキュリティサービスなどを提供して拡大するビーコン関連需要の取り込みを図っていく。

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 「ビーコン」とは、無線(光)を常に発し、その無線が届く範囲の機器などに情報を伝えるもののことを指し、無線標識とも呼ばれる。ビーコンと聞いて、渋滞情報などの交通情報を自動車に伝えるために道路上に設置されているビーコンを思い浮かべる人も多いだろう。

 そのビーコンは現在、新たなマーケティングツール「Beacon」として、幅広い注目を集めつつある。

 Beaconへの注目が高まった最大の契機は、アップルが2013年9月にリリースしたスマートフォン/タブレット端末など向けOS「iOS7」で、Bluetooth Low Energy(Bluetooth Smart)を使用したビーコンから情報を受信する機能「iBeacon」をサポートしたことだ。なお、iOS7搭載端末だけでなくAndroid OS搭載スマートフォンでもBluetooth Smart機能の搭載が標準化し、iBeacon同様のBluetooth Smartによるビーコンに対応できるようになっている。そのため、より多くのスマートフォンに、情報を伝達できる新手法として、Bluetooth Smartによるビーコンが“Beacon”として注目を集めている訳だ。

 Beaconの特長は、「プッシュ型」と呼ばれる情報発信が行える点。プッシュ型とは、情報を受ける側が、機器の操作を行わずに受動的に情報が届くもので、情報発信側から情報を“プッシュ”できる。Beaconであれば、そのBeaconの無線が届く範囲に入ってきたスマホを持ったユーザーに対し、ユーザー側の操作なしに情報を送信できる(あらかじめアプリをインストールしておくなどの設定は必要)。そのため、小売店や飲食店などが店舗/商品情報やクーポン/割引券をプッシュ配信するツールとしての応用が期待されている。


Beaconのイメージ (クリックで拡大) 出典:アプリックス

 Beaconは、単純なプッシュ型情報発信以外の応用も可能だ。2つのBeaconを用いれば、ユーザーの移動方向や位置を把握できる。そのため、出入り口から店内への移動方向であれば「いらっしゃいませ」、逆に店内から出入り口への移動であれば、「ありがとうございました」という、より状況に応じた情報発信が可能になる。

 さらにBeaconの情報を送信する範囲も選択できるため、送信範囲を数cm程度の“至近”に絞れば、NFC(近距離無線通信)などと同じように、ユーザーに情報を取得するための操作(この場合、Beaconに端末をかざすという操作)をきっかけに情報を配信する「プル型」の情報伝達ツールとしても使用できる点も大きな特長だ。


Beaconまでの距離に応じた情報提供も行える (クリックで拡大) 出典:アプリックス

 相次ぐスマートフォンのBeacon対応により、Beacon関連市場をターゲットにしたビジネスを展開する企業も増えつつあり、アプリックスもその1社だ。アプリックスは、携帯電話機やデジタル家電などに向けた組み込みソフトウェアの開発ベンダーとして知られるが、近年、組み込み無線モジュールビジネスを展開している(関連記事:後付けして簡単にスマホにデータ収集、M2M用通信モジュールの生産が開始)。同社の無線モジュールの最大の特長は、価格だ。同社は無線モジュールを使用して、構築するクラウド環境を伴うM2Mシステム構築時のソフトウェア開発費用で利益を得ることに主眼を置き、モジュールの価格は原価程度に抑えているため、1個数百円という低価格を実現している(関連記事:100円で小型組み込み無線モジュールを売る、その狙いを明かします)。


Beaconモジュール「BM1」

 低価格のBluetooth Smartモジュール「Zeemote JM1-L2S」をM2Mシステム向けに展開してきたアプリックスは2013年11月に、同モジュールをベースにBeaconモジュール「BM1」を発売した。BM1の価格は、1個300円。JM1-L2Sとの部品共通化でコストを抑えるとともに、ソフトウェア面でのビジネスで利益を得るというM2M向けと同じビジネスモデルで原価レベルの価格設定にした。

 多くの利点、長所を持つBeaconだが、克服しなければならない課題も存在する。その1つがセキュリティであり、アプリックスがBeaconビジネスで利益確保を目指している領域だ。

 登場してまもないBeaconはセキュリティがまだまだ十分とは言い難く、「なりすまし」や「不正アクセス」の不安が指摘されている。

 あるBeaconと同じデータを発信する「なりすましBeacon」を許してしまえば、来店ポイントやスタンプラリーなどで不正を働かれ、損害を被る可能性が高い。また、Beaconに不正にアクセスされ、データを書き換えられればイベント(例えば、スタンプラリーなど)が妨害され、顧客からの信頼を失う可能性もある。

 なりすましや不正アクセスを防ぐためには、データの暗号化や高度な認証システムを導入する必要がある。そこで、アプリックスは暗号化通信技術や、スマホなど端末に負荷をかけずにリアルタイムで高度な認証機能を提供する認証サーバを用いたサービスを開始している。


アプリックスの提供するセキュリティサービスのイメージ (クリックで拡大) 出典:アプリックス

 アプリックスのBM1は2013年11月の販売開始からまだまもないが、既に「200社以上で採用され商用展開も始まっている」(アプリックス)と順調にビジネスが立ち上がっているとする。アプリックスでは、BM1とともに電池などを筐体に収めたさまざまなタイプのBeaconも開発。AC電源動作タイプやUSB給電タイプ、センサー内蔵タイプのBeaconなどもラインアップし、セキュリティサービス提供も含めて、Beacon関連ビジネスをさらに広げていく方針だ。


アプリックスのBeacon関連製品。Beaconモジュール「BM1」をベースに、顧客要望に合わせたカスタムのBeaconも提供可能。タグ型Beaconには、振動センサーが内蔵されているものもあり、「タグが揺れたときに無線を発して、ユーザーに商品情報を伝える」といった使い方もできる (クリックで拡大)

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