過半数の半導体企業は「窮地に陥るリスクを抱えている」:ビジネスニュース 業界動向(2/2 ページ)
アリックスパートナーズは、世界の半導体業界の2014年見通しに関する調査結果を発表した。上場している半導体チップおよびその関連企業191社のうち半数以上(53%)が財務面で窮地に陥るリスクを抱えている、という厳しい見方を示した。
好調業種は「製造装置」「ファブレス」「ファウンダリ」
同調査では、業種(セクタ)別の状況もまとめている。それによると、「製造装置企業」、「ファブレス企業」、「ファウンダリ企業」は良好な業種であることが分かった。ただし、ファウンダリは大手のTSMCを除くと、困難に直面する企業の比率が高まる。一方、財務的に困難に直面している業種としては「太陽光発電企業」、「パッケージ組み立て・検査企業」、「半導体材料企業」、「自社製造を行う半導体企業」、「電子部品企業」などを挙げる。中でも、太陽光発電関連は、全ての企業が財務的に困難な状況に陥る可能性に直面しているという。世界市場で政府主導により取り組んできた新エネルギ政策の後押しもあって、2010年には売上高が前年に比べ87%も増加した。しかしその後は、生産能力が需要を上回る状況が続いており、業界の売上高も横ばいもしくはマイナス成長となっている。
その他186社の中でも、企業や業種によって財務体質には大きな差がある。その他186社における売上高EBITDA比率は平均で15%である。下図左側において左側上部に向かうほど収益性の高い企業/業種である。ただし、「日本企業で平均値の15%を達成するのは厳しい状況」と分析する。売り上げ規模が小さくても、利益が大きければ問題はないが、売り上げと利益が両方とも小さい企業は、統合化が進むとみている。SGAコストもセクタによって異なるが、「太陽光発電関連企業は極めて悪い状況」という見方だ。
日本の半導体生産シェアは「11.3%」まで低下
業種別に日本企業のポジションもまとめている。世界の半導体産業における日本企業のシェアは15.5%となった。1990年代初めには世界のIC生産額の50%以上を占めていたこともある日本企業だが、現在はファウンダリも含めたIC生産シェアは11.3%まで低下した。こうした中で、電子部品や半導体製造装置といった業種では、売上高に占める日本企業の構成比率は高く、今でもその存在感を示している。
スピード感を持って実行
最後に同社は、半導体各社がとるべきアクションとして4つの項目を示した。
まず、思い入れや過去のしがらみを排した「顧客・製品ポートフォリオの見直し」である。「日本の企業からも掛け声は聞くが、なかなか進んでいない。採算性の悪い顧客や製品ラインを断ち切れていない」(小野寺氏)という。
2つ目は「オーバーヘッドコストの抑制」である。日本企業も取り組んではいるが、「人員削減に対して積極的には踏み込めていない」(小野寺氏)ようだ。
3つ目は「サプライチェーンコストの削減」を挙げる。「かつては日本企業のお家芸であったが、今はそうではない」(小野寺氏)と指摘する。
最後は「プロアクティブなM&A戦略」だ。「事業規模は今や、防波堤にならない。自社の将来的なポジションの在り方を戦略的に検討していく必要がある」(小野寺氏)と話す。
これらのアクションは日本の半導体企業でも取り組んではきたが、十分な効果が表れていないのが現状だ。その理由として小野寺氏は「時間軸」を挙げた。財務的な苦境を乗り切るには、「迅速な対応」がこれまで以上に求められることになりそうだ。
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