新時代到来! ヘテロジニアス・コンピューティング最新動向【前編】:プロセッサ/マイコン(2/4 ページ)
2014年1月14日、ヘテロジニアス・コンピューティングに向けたフレームワーク「HSA」(Heterogeneous System Architecture)をハードウェアレベルで初めてサポートするAMD Aシリーズプロセッサ“Kaveri”が正式に発表された。HSA対応アプリケーションの開発プラットフォームとしても期待を集めているKaveriを中心に、HSAの現状と今後を探る。
ヘテロジニアス・コンピューティング
CPUだけでなく、本来グラフィックス処理を行うGPU(Graphics Processing Unit)にも汎用演算処理を行わせるヘテロジニアス(Heterogeneous:異種混合な の意)・コンピューティングは、GPUの性能が飛躍的に向上しはじめた2005年頃からGPGPU(General Purpous GPU)や、GPUコンピューティングという形で進化してきた。
しかしながら、GPUはCPUほど柔軟な演算処理は行えない上、CPUと密接に連係を取る際には、CPUとGPU間のデータ共有がパフォーマンスのボトルネックとなっていた。これは、GPUがCPUが扱うデータを利用する場合、PCI Expressバスを介していったんグラフィックスカード上のメモリにコピーする必要が生じるからだ。しかし、グラフィックスカードの搭載メモリはシステムメモリに比べて格段に少なく、かつPCI Expressバス転送にかかるレイテンシ(遅延時間)も生じるため、演算処理と依存関係があるデータは、GPU側で処理すると効率が悪くなってしまう欠点があった。そこで、AMDは、GPUをCPUに統合したAPUを主力製品に位置付け、CPUとGPUが密接に連係が取れるアーキテクチャ開発や、ソフトウェア開発環境の整備などを進めてきた。
AMDは、旧ATI Technologies買収を機に、2006年からCPUとGPUの統合を図る“Fusion”(フュージョン:融合の意)を進めてきた。それが形になったのが、2011年に市場投入された初代APUのAMD Eシリーズ&Cシリーズの“Brazos”(ブラゾス:開発コードネーム)と、同年6月に市場投入されたAMD Aシリーズ“Llano”(ラノ:開発コードネーム)だ。
しかし、その主力となるLlanoは従来のCPUコアとGPUコア、ノースブリッジ機能などを統合したにすぎなかった。その一方で、AMDは同年6月にヘテロジニアス・コンピューティング環境整備のために、Fusion Developer Summitを開催し、汎用演算処理性能を高めたGPUアーキテクチャである“GCN”(Graphics Core Next)のアーキテクチャを発表。その翌年の2012年にはCPUコアをBulldozerアーキテクチャベースのPiledriverコアに一新。また、同年6月に開催された第2回AMD Fusion Developer Summitでは、GPU向けに特別なプログラミングを行うのではなく、CPUとGPUの垣根を取り除き、容易にプログラミングが行える環境として「HSA」(Heterogeneous System Architecture)が提唱され、同アーキテクチャの推進団体としてのHSAファウンデーション設立がアナウンスされた。
それから、約1年半のときを経て、AMDは、KaveriでようやくHSAの実行環境を手に入れたことになる。
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