“6 in 1”オシロスコープ、機能や性能を手元でアップグレード可能:テスト/計測 オシロスコープ
テクトロニクスは、スペクトラムアナライザなど、最大で6種類の測定機能を1台の筐体に統合できるミックスド・ドメインオシロスコープ「MDO3000シリーズ」を発表した。オプションの機能やモジュールを追加すれば、測定仕様に応じた機能や性能に手元でアップグレードすることが可能である。
テクトロニクスは2014年2月26日、スペクトラムアナライザなど、最大で6種類の測定機能を1台の筐体に統合できるミックスド・ドメインオシロスコープ「MDO3000シリーズ」を発表した。オプションの機能やモジュールを追加すれば、測定仕様に応じた機能や性能に手元でアップグレードすることが可能である。組み込み機器向けに設計された電子回路のテストや評価などの用途に向ける。
MDO3000シリーズは、オシロスコープをベースとした製品で、スペクトラムアナライザ機能を全てのモデルに標準で搭載した。また、製品購入後にユーザー登録すれば、内蔵されているデジタルボルトメータ(DVM)の機能を有効にして、無償で利用することができる。さらに、オプション機能やアプリケーションモジュールの追加/変更によって、ロジックアナライザやプロトコルアナライザ、任意波形/ファンクションジェネレータの機能を搭載したり、アナログ周波数帯域を拡張したりすることが可能だ。1台の計測器に複数のテスト環境を構築できることで、テストの作業効率を改善することが可能になるとともに、当面のテストに必要な機能や性能を備えたモデルを購入すればよく、投資効率を高められるメリットがある。
「究極のオシロスコープ」を実現
テクトロニクスの代表取締役を務める米山不器氏は、「測定器ユーザーの基本的なニーズを満たしていないことに気が付いた。組み込み機器設計のデバッグを行うために、これまでは6つの測定器をテストベンチに並べて置かなければならなかったが、測定器によっては操作性も異なるということだ。MDO3000シリーズは、このようなテスト技術者の悩みを解決できる製品である」と話す。奥行きが15cmで、重さが4.2kgというコンパクトで持ち運び可能な筐体に、6つの測定機能を詰め込んだ「究極のオシロスコープ」(米山氏)と位置付けている。
デバッグ機能を充実
MDO3000シリーズは、オシロスコープの周波数帯域が100MHz、200MHz、350MHz、500MHzおよび1GHzの5タイプあり、それぞれアナログ入力が2チャネルと4チャネルのモデルを用意している。サンプルレートは最大5Gサンプル/秒である。特に、頻度の少ない間欠エラーを検出するためのデバッグ機能が充実している。例えば、毎秒28万回以上と、高速な波形の取り込み/更新を可能とするFastAcq(ファストアック)モードを備えている。また、反転波形パレットにより、間欠的なイベントを強調して表示させるなど、エラー検出を容易にした。しかも、発生頻度によって、波形の表示を赤色と青色に分けるなど識別しやすくしている。
さらに、負荷容量が3.9pFと小さい受動プローブが標準で添付されている。これにより被測定信号への影響を極小化することができる。その上、125種類のトリガ機能や、レコード長がチャネルあたり10Mポイントのメモリを備えるなど、イベントを確実に取り込むための工夫がなされている。価格(税別)は、周波数帯域が100MHzで、アナログ入力が2チャネルのローエンドモデル「MDO3012」の場合、スペクトラムアナライザ機能がついて39万6000円と、安価な設定となっている。
最大3GHzの取り込み帯域幅
スペクトラムアナライザの機能は、全モデルに搭載されている。しかも、無線通信機能の測定をより正確に行うため、独立したRF測定機能を採用した。周波数範囲は標準で9kHzからオシロスコープの周波数帯域までだが、オプションを追加することで最大3GHzまで拡張することができる。従来の掃引型スペクトラムアナライザでは一般的に取り込み帯域幅が10MHzだったが、MDO3000シリーズでは取り込み帯域幅が最大3GHzと広い。このため、ISMバンド内の信号解析などでは関連するスペクトラムを1回の取り込みで確認することが可能となる。この他、位相ノイズは−81dBc/Hz未満、表示平均ノイズレベルは−138dBm/Hz未満とするなど、一般的なスペクトラムアナライザと同等の性能を実現している。
121.2psの分解能でタイミング解析
ロジックアナライザ機能では、オプションでデジタル入力は最大16チャネルまで対応することができる。しかも、アナログチャネルとデジタルチャネルは時間相関が取れているため、動作を一目で確認することが可能だ。サンプルレートは500Mサンプル/秒である。また、上位モデルに採用している高速サンプリングが可能な「MagniVu」をサポートしており、121.2psの分解能でタイミング解析が行える。
9種類のシリアルバス規格に対応
オプションのプロトコル解析パッケージを用いると、オシロスコープ上でデコードされた波形データを画面上に表示させることができる。これによって、CANやLIN、FlexRay、USB2.0など9種類の主要なシリアルバスのデバッグを迅速に行うことも可能となった。
任意波形/ファンクションジェネレータは、サンプリング速度が250Mサンプル/秒のD-Aコンバータや、レコード長が128kポイントの編集メモリを内蔵し、最大50MHzの正弦波を含め13種類の標準波形を出力することができる。また、外部から取り込んだ波形を、オシロスコープに内蔵された波形エディタ機能を用いて、ノイズなどを付加した波形に編集して出力すれば、ストレステストなども容易に行える。
DVM機能は、オシロスコープが実行中はもとより、停止しているときも信号をモニタすることができる。測定精度は電圧が4桁、周波数が5桁となる。また、測定結果は、最小値や最大値、現在の値、5秒間の振れ幅などをグラフィック表示することができる。
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