ワイヤレス給電の市場規模、5年後は40倍に:ビジネスニュース 市場予測
業界団体がパートナーシップを組むなど、新たな動きがみられるワイヤレス給電市場。世界での売上高は、2013年から2018年にかけて約40倍になる見通しだ。
世界ワイヤレス給電市場は、新製品が登場し、業界団体がパートナーシップを締結するなど、急成長する兆しを見せている。
米国の市場調査会社であるIHSが2014年3月13日に発表したリポートによると、スマートフォンやタブレット端末などのモバイル機器に向けたワイヤレス給電システムの市場規模は、今後4年で40倍に拡大する見込みだという(関連記事:ワイヤレス給電の最新事情)。
2014年のワイヤレスパワートランスミッタ/レシーバの売上高は、2013年の2億1600万米ドルから、264%増となる7億8500万米ドルに達するとみられている。2018年には、85億米ドル規模に増大する見込みだ。2013年から2018年の間に、40倍近く成長することになる。さらにSanderson氏は、「2016年には、磁気共鳴方式のレシーバの年間出荷数量が、電磁誘導方式のレシーバを上回る見込みだ」と述べている。
IHSのワイヤレス給電部門でアソシエートディレクタ兼主任アナリストを務めるRyan Sanderson氏は、「スマートフォン/タブレット端末メーカー各社の間では、ワイヤレス給電機能を製品に直接組み込む傾向が強まっている」と述べている。
2013年には、電磁誘導方式のワイヤレス給電機能を自社の製品に組み込んだ大手モバイル機器メーカーが何社かあった。例えば、Nokiaの最新スマートフォン「Lumia」や、Googleのスマートフォン「Nexus 4」と「Nexus 5」、タブレット端末「Nexus 7」などが、ワイヤレス給電をサポートしている。また、Samsung Electronicsのスマートフォン「GALAXY S3」「GALAXY S4」は、交換用電池でワイヤレス給電に対応した。
磁気共鳴方式の採用が拡大
既存のワイヤレス給電機能では、電磁誘導方式が多く採用されている。しかしIHSによると、業界は今後、磁気共鳴方式のソリューションを採用する方向に向かっていくという。
Sanderson氏によれば、「ワイヤレス給電システムは今後、磁気共鳴方式による技術をベースとして構築されていく見込みだ。磁気共鳴方式は、(電磁誘導方式に比べて)給電側と受電側の距離を長く取れて、位置合わせの自由度も高い。インフラへの組み込みも簡単になるとみられる。また、磁気共鳴方式と電磁誘導方式の両方に対応する製品もある」という。
今回、電磁誘導方式と磁気共鳴方式をそれぞれ採用する業界団体の間で、新たにパートナーシップが構築されたことにより、ワイヤレス充電技術を広く普及させる上で障害となっていた要因が取り除かれ、売上高の増加が期待できるようになった。ワイヤレス給電に関する規格としては、磁気共鳴方式をサポートする「A4WP(Alliance for Wireless Power)」と、電磁誘導方式の規格である「PMA(Power Matters Alliance)」が存在するが、この2つの主要な業界団体が2014年2月、パートナーシップの締結を発表した。それぞれの団体が進めてきた給電技術を統合することで合意したという。
Sanderson氏は、「IHSとしては、このような動きは業界に大きなメリットをもたらすと見ている。ただし、PMAとA4WPが、2つの独立した団体であることに変わりはないという点には注意は必要だ。今回のパートナーシップ提携によって実現するのは、それぞれの団体に所属するメンバー企業が、両団体の仕様に準拠した製品を開発できるようになるということだけだ」と述べている。
同氏は、「WPC(Wireless Power Consortium)ともこうした合意を結ぶべきだ」と主張している。WPCは、電磁誘導方式で最も普及している規格「Qi」を策定している。ただし、規格を改定した際、磁気共鳴方式を採用することを発表している。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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