「きずな」で衛星伝送3.2Gbpsを達成、4K映像も非圧縮で伝送:無線通信技術
情報通信研究機構(以下、NICT)は、高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)を利用して、3.2Gビット/秒の衛星伝送に成功した。16APSK多値変調の信号を周波数多重化することによって、「きずな」の通信性能を約5倍に高めることができた。同時に、4K超高精細映像の非圧縮伝送にも成功した。
情報通信研究機構(以下、NICT)は2014年5月、高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)を利用して、3.2Gビット/秒の衛星伝送に成功したと発表した。16APSK多値変調の信号を周波数多重化することによって、「きずな」の通信性能を約5倍に高めることができた。同時に、4K超高精細映像の非圧縮伝送にも成功した。
NICTは、「きずな」に搭載されている中継器を用い、1.1GHz伝送帯域内に16波の16APSK多値変調信号を周波数多重化(16APSK-OFDM)して伝送した。1波あたりの周波数帯域幅を狭くしたことで、群遅延特性のひずみによる影響を小さくしている。さらに、伝送路の振幅周波数特性ひずみに対して、各波のEs/Noを平均化するように補正することで信号誤り率を向上させた。その上でLDPC誤り訂正機能を加えたことで、ほとんどエラーのない通信環境を実現し、3.2Gビット/秒の広帯域伝送を可能にしたという。
また、NICTが開発した「マルチチャネル映像伝送コーデック」に、「きずな」のIP衛星伝送プロトコルを組み込むことで、4K超高精細映像を非圧縮で伝送することにも成功した。マルチチャネル映像伝送コーデックは、これまで32枚のハイビジョン映像を同時に同期伝送することに成功していた。今回の実証実験ではハイビジョン映像4枚を同時に同期伝送することで4K映像の伝送を可能とした。
NICTは、「きずな」と通信するための大型車載地球局を利用して、災害被災地の対策本部などにおける情報収集/発信や、4K映像を使った遠隔医療などに、今回の研究成果を活用できる、とみている。また、圧縮された4K映像であれば、30チャネル程度を同時伝送できる可能性も高いとみている。
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