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車載CMOSセンサーで「業界初」の裏面照射型、オムニビジョンがADAS向けに開発車載半導体(1/2 ページ)

OmniVision Technologies(オムニビジョン)が、車載CMOSセンサーでは「業界初」(同社)となる裏面照射型の製品「OV10640」と、OV10640のコンパニオンプロセッサ「OV490」を発表。バックモニターやサラウンドビューに加えて、先進運転支援システム(ADAS)に最適だとする。

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車載CMOSセンサーで「業界初」の裏面照射型、オムニビジョンがADAS向けに開発

 CMOSセンサー大手のOmniVision Technologies(オムニビジョン)は2014年5月12日、東京都内で会見を開き、車載CMOSセンサーでは「業界初」(同社)となる裏面照射型の製品「OV10640」と、OV10640のコンパニオンプロセッサ「OV490」を発表した。OV10640は、裏面照射型の採用による感度の高さとともに、一般的な車載イメージセンサーの2倍に達する最大120dBものダイナミックレンジの広さが特徴。駐車時に用いるバックモニターやサラウンドビューに加えて、走行中に他の車両や歩行者、白線などを認識して運転を支援する先進運転支援システム(ADAS)に最適とする。2014年6月にサンプル出荷を開始し、同年10〜12月期に量産を始める予定だ。

 オムニビジョンは、CMOSセンサーを手掛けるファブレス半導体ベンチャーとして1995年に設立された。独自開発の裏面照射型CMOSセンサーを主力製品として急激な成長を遂げ、2013年末時点で売上高が14億700万米ドル、従業員数が約2000人で、もはやベンチャーとは呼べないほどの規模になっている。CMOSセンサーの世界シェアは30%、累計出荷数は46億個以上に達する。

オムニビジョンの会社概要(左)と売上高推移(クリックで拡大) 出典:オムニビジョン・テクノロジーズ・ジャパン
オムニビジョン・テクノロジーズ・ジャパンの薄井明英氏
オムニビジョン・テクノロジーズ・ジャパンの薄井明英氏

 オムニビジョンの主力市場は、売上高(2013年7〜9月期)のうち52%を占める、スマートフォンやタブレット端末などのモバイル機器だ。今回新製品を投入する車載市場は、売上高の10%弱を占める程度で、監視カメラやセキュリティ、医療機器などと同様に今後の成長に向けた注力分野となっている。

 オムニビジョンの日本法人であるオムニビジョン・テクノロジーズ・ジャパンの代表を務める薄井明英氏は、「車載イメージセンサー市場におけるオムニビジョンのシェアは20%強。今回のOV10640とOV490は、有力な自動車メーカーやティア1サプライヤが本社拠点を置く日本市場からの要求を反映させた製品だ。高い評価が得られるものと確信している」と意気込む。

車載イメージセンサー市場は2020年に1億7000万台へ

 オムニビジョンは、車載イメージセンサーの市場規模が、2014年の5500万台から、2020年には3倍強となる1億7000万台まで伸びると予測している。そして、2014〜2020年にかけて急激に伸びる用途として「センシングカメラ」を挙げる。

車載イメージセンサーの市場予測(左)と主な用途(クリックで拡大) 出典:オムニビジョン・テクノロジーズ・ジャパン

 センシングカメラとは、富士重工業の「アイサイト」や日産自動車の「エマージェンシーブレーキ」などに代表される、自動ブレーキや白線検知による車線逸脱警報などの機能を有するADASに用いられる車載カメラだ。駐車時など徐行レベルの速度で走行する際に用いるバックモニターやサラウンドビューに用いる車載カメラは、「ビューカメラ」として用途を分けている。「ADASは、自動運転などを想定してさらに進化を続けている。そしてセンシングカメラには、従来よりもさらに高い感度と、より広いダイナミックレンジが求められようになる」(薄井氏)という。

 OV10640とOV490は、そういったセンシングカメラに対する厳しい要求を満足する高い性能を備えている。CMOSセンサーチップのOV10640は、車載CMOSセンサーとして業界初となる裏面照射型の製品であり、従来品の「OV10635」と比べて2倍以上の感度を有している。なお、製造プロセスは、90nm/200mmウエハーを用いる「OmniBSI」を用いた。

オムニビジョンのCMOSセンサー製造プロセス
オムニビジョンのCMOSセンサー製造プロセス。「OV10640」に適用したのは、左から2番目の「OmniBSI」。右端の「PureCell」は2013年に開発した裏面照射型の第3世代技術で、2000万画素以上を視野に入れたものだという(クリックで拡大) 出典:オムニビジョン・テクノロジーズ・ジャパン

 画素数は130万で、HD映像(1280×720画素)を60フレーム/秒で撮影可能だ。モバイル機器やデジタルカメラのイメージセンサーの画素数と比べると、130万という数字は小さく感じられるかもしれない。しかし、現行のバックモニターやサラウンドビューで使われているイメージセンサーは、VGAサイズ(640×480画素)の映像の撮影に対応する30万画素のものがほとんどだ。これらと比べて、OV10640は極めて高解像といえる。

 イメージセンサーにとって、夜間など低照度の環境下で他の車両や歩行者などを検知するのに必要な性能は感度だ。その一方で、低照度の環境下で対向車のヘッドランプなど明るく光るものを正しく検知するには、広いダイナミックレンジが必要になる。OV10640は、一般的なイメージセンサーの2倍以上となる120dBのダイナミックレンジを実現している。一般的なダイナミックレンジを広げるHDR(High Dynamic Range)技術では、ダイナミックレンジを明るい側にずらした画像と暗い側にずらした画像を合成する。この場合、2種類の画像を撮影する際の時間差により、動体撮影時に映像のぶれやゴーストなどが発生しやすいことが問題になる。「OV10640では、時間差が発生しないように2種類の画像を撮影する工夫を加えることで、この問題を解決した」(オムニビジョン)という。

車載イメージセンサーにとってのHDR技術の重要性
車載イメージセンサーにとってのHDR技術の重要性(クリックで拡大) 出典:オムニビジョン・テクノロジーズ・ジャパン

 OV490は、OV10640に最適化されたコンパニオンプロセッサである。OV10640から入力されるRAWデータを使って、YUVまたはRGBデータ(主にビューカメラ向け)と同時にRAWデータ(主にセンシングカメラ向け)を出力できる。また、2本のRAWデータ入力から(つまり2個のOV10640と接続して)、YUVまたはRGBデータを2本出力することもできるという。

「OV10640」と「OV490」の特徴
「OV10640」と「OV490」の特徴(クリックで拡大) 出典:オムニビジョン・テクノロジーズ・ジャパン

 CMOSセンサーとコンパニオンプロセッサは1チップに集積する方が有利という意見もあるかもしれない。これについて薄井氏は、「集積すればサイズを小型化できるかもしれないが、コストや信頼性の面ではチップを分割した方が有利だ。従来の2つの車載CMOSセンサー製品を日本市場で展開する中で得た顧客からの要求を反映した結果でもある」と述べている。

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