日本の電力は足りているのか?――“メイドの数”に換算して、検証してみる(後編):世界を「数字」で回してみよう(3)(3/4 ページ)
2013年、日本では平均1億キロワット(10000“万キロワット”)の電力が消費され続けました。この「10000」という数字。日本中の総発電に対して、どのくらいの大きさなのでしょうか。また、そこから「日本の電力が足りているか否か」について、結論を導くことは可能なのでしょうか。
足りる? 足りない?
しかし、まあ、これは、私の計算の精度が悪過ぎるのだろう、と思っています。
まず、(a)条件が厳し過ぎる(日本全国が、同時に同時刻(秒の単位まで)にピークがやってくる)、(b)仮説が甘く、計算が単純過ぎる(業種別電力にしていない、単純な比率を使っている)というのが理由です。
何より、本当に3000も足りなかったら、日本は夏の間、毎日のようにブラックアウト(大停電)が発生しているはずですからね。違うデータを、違うアプローチで計算したら、全く別の結果になる可能性は大きいです。
それでも、『なんとか、この数字(19000)の裏を取りたいなぁ』と思い、脱稿直前に、若手エンジニアたちに相談を持ちかけたところ、経済産業省の「エネルギー白書」(p.180)に、年間最大電力のグラフが表示されていると教えてくれました。
過去の国内最悪ピーク電力のワースト5を並べてみると、以下のようになりました。
(その年の)最大電力発生日 | 瞬間最大電力(キロワット時) |
---|---|
2001年7月24日 | 18300 |
2005年8月5日 | 17800 |
2010年8月23日 | 17800 |
1995年8月25日 | 17100 |
2013年8月9日(昨年) | 15900 |
やはり、歴代最悪の最大電力でも19000には届いていないようです。昨年(2013年)は、国内で使用できる電力の上限値(江端推定)の16000にも至っていません。それでも、ギリギリセーフ感は否めないとは思います。
今回の計算結果で、私は、「電力が足りる/足りない」の議論は、数字的には、どっちの解釈にも振ることがでるほど、絶妙なボーダー線上にあるという所感を得ました。
今回の計算作業を通じて、私は、「日本の電力、足りているの? 足りていないの?」という議論には、あまり意味がないような気がしてきました。
ブラックアウト(大停電)が発生すれば「足りていない」ことの証明にはなるでしょうが、ナンセンスです。また、ブラックアウトが起きていないこと(起こさないような努力を行っていること)をもって「足りている」と主張することも、またナンセンスです。
今の私は、誰かから頼まれれば、「足りている」「足りていない」のどちらでも、論を展開する自信があります(加えて、数字の操作や、「統計でウソをつく法」*4)も、一通り知っていますからね)。
*4)「統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門」(講談社ブルーバックス)
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