STマイクロがSiC-MOSFETを国内初公開:TECHNO-FRONTIER 2014
STマイクロエレクトロニクスは、「TECHNO-FRONTIER 2014」(2014年7月23〜25日)で、SiC(炭化ケイ素)によるMOSFET(SiC-MOSFET)製品を公開した。同社SiC-MOSFET製品の展示は国内で初めてという。
STマイクロエレクトロニクスは、「TECHNO-FRONTIER 2014」(テクノフロンティア/2014年7月23〜25日、東京ビッグサイト)で、SiC(炭化ケイ素)によるMOSFET(SiC-MOSFET)製品を公開した。同社SiC-MOSFET製品の展示は国内で初めて。
公開したSiC-MOSFETは、耐圧1200V、定格電流45A品、オン抵抗80mΩの「SCT30N120」。現在サンプル出荷中で、直径4インチサイズのSiCウエハーを用いてイタリア・カターニャ工場で2014年9月からの量産を目指している。
SiCは、従来パワーデバイスに用いられるシリコンよりもバンドギャップが大きいなどの特性を持ち、次世代のパワーデバイス材料として注目が集まっている。そのため、SiC-MOSFETの製品化が相次いでおり、STマイクロのように以前よりシリコンパワーデバイスを手掛けてきたパワー半導体メーカー以外にも、新規参入メーカーも登場するなど、製品化競争が激しくなっている。
高温動作に強いSiC-MOSFET
その中で、STマイクロのSCT30N120は、現状のSiC-MOSFET製品としては最大クラスの耐圧1200Vを実現した他、動作温度をジャンクション温度(Tj)で200℃まで保証した「高温動作保証が、競合他社と異なる特長」(説明員)という。競合他社のSiC-MOSFETはTj=150℃までの動作保証にとどまっているとし、「200℃まで保証されることにより、これまで水冷式の冷却装置を使っていた用途であれば、空冷式ヒートシンクに置き換えられるなど、冷却システムを大きく簡素化できる利点がある」(説明員)という。
さらに、高温動作時のオン抵抗の低さも特長で、「動作温度25℃時と150℃時のオン抵抗を比較した場合、一般的なSiC-MOSFETであれば、1.5倍程度まで上昇するが、SCT30N120は約10%に抑えられている」とした。
将来は車載も視野
STマイクロでは、既に量産化しているSiCダイオード製品とともにSCT30N120の提案活動を実施。産業機器や太陽光発電用パワーコンディショナー用途での採用を見込んでいる他、「自動車業界からの引き合いも既にあり、将来的には自動車への搭載も見込まれる」(説明員)としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ST、28nm FD-SOIチップの生産準備を完了
STは、28nmプロセスを適用したFD-SOIの試作品を生産する準備が整ったと発表した。同社は、「FD-SOIは、プレーナ型バルクCMOSやFinFET CMOSなどに比べて、性能や消費電力、製造性の間のトレードオフが少ない」と主張している。 - SiC-MOSFETの課題克服へ、新材料を用いたゲート絶縁膜で信頼性を向上
SiC-MOSFETの量産採用に向けた課題の1つとして挙げられているのが、酸化シリコンを用いたゲート絶縁膜に起因する動作時の信頼性の低さだ。大阪大学と京都大学、ローム、東京エレクトロンは、AlON(アルミニウム酸窒化物)を用いたゲート絶縁膜によって、SiC-MOSFETの信頼性を高める技術を開発した。 - デンソーがSiCデバイス開発を加速、2015年以降発売の次世代EV搭載を目指す
デンソーは、トヨタ自動車、豊田中央研究所と共同で開発しているSiCデバイスの開発目標を明らかにした。耐圧1200V/電流容量200AのSiC-MOSFETとSiC-SBDを6インチウエハーで製造することにより、コストを耐圧と電流容量が同じシリコンデバイスの2倍以下に抑えることで、2015年以降に市場投入される次世代EVへの搭載を目指す。